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NerdTV #3: Bill Joy NerdTV #3: Sun Microsystems 共同創設者 Bill Joy Bob: さてBill、最近企業家とか技術屋とか、いろいろな名前で自分を呼んでいる人たちがベンチャーキャピタルに転身するという論理的な流れが -- 論理的とは言わないかも知れませんが -- 私たちはそういう流れの中にいるように見えます。あなたは今VCになっていますが、これまでの20か25年間、どんな仕事を経てきましたか? Bill: 30年ですね。 Bob: 30年間別の仕事をしてきた。 Bill: そうです。 Bob: どんな気分ですか? Bill: まあ、30年間いろんなことをしてきましたから。 Bob: はい。 Bill: 私はUNIXを書いていたプログラマーでした。その後Sunに行きました。会社を立ち上げたんですが。ハードウェアとソフトウェア両方の設計、Javaの言語設計をやりました。Sunの対外スポークスパーソンもやりました。でも最後の数年は -- Bob: 世界初のRISCプロセッサをやった。 Bill: RISCプロセッサ -- まあ実際にはMIPSがありましたし、最初のRISCプロセッサはIBMの801です。正しくは初期の商用RISCアーキテクチャの一つ、ですね。Sunでの最後の数年は、インキュベーターをやっていました。何かを始めるためにあちこち出張して意志決定をするのにうんざりしまして。少し企業投資をやりました。Kleiner-Perkins(*Kleiner Perkins Caufield & Byers - 米国の「超一流」ベンチャーキャピタル企業)に行ったのですが、そこには友人がたくさんいました。彼らは1982年にSunに投資してくれた人々で、ある意味里帰りして友人と働くようなものでした。今でも私はすばらしい企業家たちがすばらしい会社を立ち上げるのを手助けしています。こういう人たちと一緒に働くのは大変な喜びですね。 企業家の見分け方 †Bob: すばらしい企業家というのは、部屋に入ってきただけで感じられるものですか? 企業家の善し悪しを計るための3つの質問、みたいなものはありますか? Bill: まず最初に情熱ですね。目的と、情熱と、他にそれを実現するための能力です。大きなアイディアを実現するための道のりは長いし、やることもたくさんあるのはわかっています。高尚なことも泥臭いことも必要です。(*gotta have the high and the low)、良くできたビジョンは必要ですが、本当に物事を始めるには袖をまくって手を汚さなくてはいけません。情熱を感じるのは簡単ですが、時にはでたらめなこともあります。判断に少し時間がかかるのは、物事をまとめあげて本当に仕事を前に進める企業家的な精神の部分が、どれだけ現実的で本当のものか、というところです。 Bob: では、本物ではなくでたらめなものを感じたから、取引から手を引くことを進めるような場面もあるんでしょうか? Bill: もちろんです。そういう取引はたくさん -- 私たちは取引とは言わずに投資とか機会とか起業と言いますが。取引というのは、。John Doerr(*KPCBスタッフの一人)が言ったように、本当に起こっていることに、ある意味悪印象を与える言葉だと思います。この言葉は使わないよう気をつけます。難しいですが。「〜という感じ」(*like)と同じです。あんな感じ、こんな感じ、という具合です。みんながしょっちゅう使う言い方ですが -- Bob: では、番組中で二度と取引という言葉を使わない、というこちらからの挑戦と思ってください。 Bill: そうしましょう。文脈上それが適切な言葉である場合もありますが、大体はそれでいいと言えるでしょうね。 Bob: さて、企業家からベンチャーキャピタリストに転じたあなたは、イエスという機会よりノーという機会の方が多いと思いますが。 Bill: それはもう仕方ないです。私たちのところには毎年何千もの企業家の業務計画が舞い込んできます。そのうち実際に投資するのは場合によっては20くらいです。確率は低いですよ。 Bob: あなたの立場なら、単に電話をかけて誰にでもノーと言っていればいいのでは。 Bill: もう少しでものになりそうないいアイディアはたくさん入ってきますよ。必ずしも楽ではないと言うことです。自分が望むチャンスを全部追いかけることはできないんです。外の世界には競争があります。資力を豊富に持った人は世の中にたくさんいます。いいものを見つけて詳しく見てみたとしても、彼らが自前で資金調達することに決めたりします。いい投資機会の多くは、資金調達を一度しかやっていません。その一回を逃すと、それがごく初期の調達ラウンドであるAラウンド、あるいは最初の実質的な資金調達である、Bラウンドと呼ばれるもの、そのどちらであっても、その一ラウンドを逃したらもう機会はないんです。 Bob: これはどんな会社でも、名前を挙げられるような成功した会社でもあてはまることですが、ベンチャーキャピタルの会社を20、40、50、100社回ってやっと誰かがサインをしてくれる。これはもう避けられないことのように見えます。ただでさえ、これまで68人が見て却下したとわかっているものを見る気になるという、見込みのある投資機会というのはどういうものなんでしょうか? Bill: Googleのおかげで、そういう状況は少なくなりました。ある企業家と会ったのですが、彼はとても面白そうな技術を持っていて、会社も非常に若く、彼が持ってきたスライドには最初の商業製品は2014年にできあがると書いてありました。もちろんこれは資金的には食べるにも事欠くくらいの状態で、彼が今いる組織は彼らのミッションに合っていませんでした。彼は私たちに「どうやってうちを見つけたんですか」と尋ねてきました。答えは、あなたのアイディアになんとなく似ているものを探していて、たまたまweb上で彼のサイトへのリンクを見つけたわけです。その会社を、彼自身を探し出すのはちょっと時間がかかりました。そこへの参照はあっても完全ではなかったので、うちの会社の管理者に頼んで探してもらいました。彼女はうまく見つけ出してくれて、彼は私たちと話ができると言うことにとても驚いていましたよ。 Bob: では、私たちは企業家が向こうから問い合わせてくると思っていますが、時にはベンチャーキャピタルから問い合わせをするんですね。 Bill: 向こうからやってきてうちのドアを叩く人はいくらでもいますが、私たちは新しいアイディアを育てることもしますし、外に出て探すこともします。ただおそらく大半は向こうからやってきますね。 Bob: さて、もしあなたが企業家を必要としている、あるいは何かのアイディアに巡り会ってそれを何とかしてパッケージ化したいという状況だとして、企業家はもっといいアイディアが必要か、あるいはIT部門にもっといい企業家が必要で、どうやって -- 私が考えるに、企画を相当先まで進めて、それでも不採用の決定を下すことも往々にしてあるんじゃないかと Bill: そうですね。 Bob: そういう機会はどうなるんですか? 他の人に譲るんですか? それとも単に清算しておしまいですか? Bill: まあ時には、言うなれば違う種類のお金に人を送ることがあります。Kleiner-Perkinsに人が来るのはお金のためでもありますが、それ以上に人脈を作るためでもあります。私たちはベンチャーキャピタルだけでなく、人脈キャピタルもやっています、と言っておきたい。社員や提携先や自分の販路になってくれる他の会社と顔合わせをしないといけませんから。しかし、ベンチャーの収益額がどれだけのものになるか知らない人がやってくることも考えられます。5年で投資額の5倍というアップサイド(*「保有している株式の株価が猛烈に上がることによって生まれる益」補足情報参照)は、多くの人にはいい投資先に見えることでしょう。しかしこういう種類の投資はもっと大きなリターンがなければ、通常はポートフォリオに入れません。私たちの投資はすでに、それよりもアップサイドの小さなポートフォリオでさえうまくいかないかもしれない、という大きなリスクを抱えているからです。 Bob: どのくらいのアップサイドを狙うんですか? Bill: 5年で500万とか1000万ドル程度のビジネスであれば、関心はありません。5年で1億ドルであれば、見込みがあります。これなら関心もあります。このベンチャーを成功させるために多くのエネルギーを注ぎ込まないといけませんから、相当な規模の市場が必要になります。本当に成功させることができたら、そのまま長続きして、かつ大きな企業になって欲しい。大企業を育ててそれに投資をしていきたい -- 長年の間に、私はSun、Lotus、Amazon、Intel、Genetech、Compaqなど、大成した多くの企業とパートナーシップを築いて、その中で話をしています。 Bob: 彼らもあなたも成功しているように見えますけどね。今あなたがいる側にいるのと、かつて何年にもわたってあなたがいた側にいるのとでは、どういう違いがありますか? Bill: 自分が考えていたよりもずっと大変な仕事でした。それに、考えていたよりも面白い仕事です。面白いことが多い。圧倒されますね。仕事のプロセスも、自分が思っていたより遙かに厳密です。あらゆる意味でスケールが大きくなっていることに、ちょっと驚いています。 Bob: では、パートナーの集団が小切手帳に何を書き込むかを巡って言い争うようなことはないわけですね? Bill: ないですね。これは本当にパートナーシップです。階級があったりはしません。アイディアや議論による民主制です。これは推進する価値のある、いい投資機会だと自分のパートナーを説得しないといけないんです。投資する資金の分だけではなく、時間分の価値もあるし、さっき言いましたが、ビジョンも大きいと。しかしチームが完成するかどうか、という実務的な観点もあります。チームがそろった状態でやってくることは非常にまれです。エンジニアリングが必要か、マーケティングか、あるいは他の欠けた部分か、普通はお金が足りないんですが、それよりも今あるものをかき集めて、チームが理解できていないことを理解できるよう導くことが必要です。理解できていないこと、ポートフォリオにある他の投資案件のことですね。 Bob: あなたはジェネラルパートナー(*追加情報参照)になる過程の初期段階にありますね。今年、しばらく前に参加された。 Bill: そうですね。今年の初めに。 Bob: ですね。まだ誰かを解雇したことはありませんか? Bill: 会社でですか? Bob: ええ。 Bill: ないですね。まだ自分が筆頭パートナーになるような投資をしていませんので。ゆっくりやるのがいいだろうという風に言われました。いくつかの新しい投資案件で、共同パートナーというか、どう呼ぶかは人それぞれですが、そういうことをやっています。なのでそういうものに加わって、他にもいくつか既存の案件を手伝っています。私たちは横断的に仕事をします。みんながそれぞれに必要な仕事をします。だから私もポートフォリオ全体にわたって働きます。必要な変化を起こす手助けをすることを恐れたりはしません。どちらにとってもいいことなんです。会社にとっては、当たり前ですが、その変化が必要なことであればそのほうがいい。会社を離れる社員にとっても、それは必ずしも彼らに何か問題があったわけではなく、そこにうまくはまらなかっただけということです。それに、事実を認めてその痛みを正面から受け止めて、さっさと他のことにとりかかるほうがいいんです。 Bob: 実は最近気がついたんですが、私は今まで働いてきた職を全部首になってますよ。 Bill: 本当ですか? Bob: ええ。 Bill: それは驚きますね。 Bob: それはダメなんじゃないかと思うこともありましたけど、実際には首になるたびに、それはいいことなんだと気づきましたよ。 IHOPを首になった件 - Juicy Bit †Bill: International House of Pancakes(訳注:米国のパンケーキ専門ファミレス)を首になったことはありますが。 Bob: それはどういう事情で? Bill: 大学時代に、料理をして院に行くための学費を稼いでいました。2週間働いてきて、あともう一日いたら自分は組合に入ることになる。それで首になりました。多分人件費を下げるための彼らのやり方なんでしょうね。こうすれば一時雇いだけを使い続けることができる。 Bob: そうすると、そこで働く人はみんな2週間しか雇われないことを知っていたけど、あなたは働き続けられると思っていたと。 Bill: 働きたい大学生はいくらでもいたし、仕事自体もたいしてスキルは必要ないですからね。 Bob: そうですかね。パンケーキをひっくり返すうまいタイミングを知らないといけないんじゃないですか。 Bill: ああ、まあそのくらいはそうですね。あれは派遣会社ですよ。派遣会社による給与水準の最適化だった。 Bob: 今探している投資機会はどんなものですか? つまり、テクノロジーがこれからどこへ向かうのかを知りたくてこういう質問をするんですが。 Bill: はい。 Bob: では、これから私たちも注目しておいた方がいい波が、水平線の上に現れているのが何かあなたには見えていますか? Bill: 私たちには幅広いパートナー関係があります。生命科学グループがあって、メインパートナーであるBrook Beyers(*KPCBの創立者の一人。1972年以来、生命科学方面のベンチャーキャピタリスト)はこの分野の先行者です。ただ、生命科学方面の新しいパートナーを含む他の人数は -- 一般的に情報技術と呼ばれる方面のグループの方が大きいです。これはインターネットだけでなく、エレクトロニクスやソフトウェア・ハードウェアの会社なども含みます。エネルギーや素材分野への投資もいくつかあります。なので、生命科学の案件全般をやっているというわけではありません。生命科学の案件が、時には別の市場と隣り合って、その市場に応用可能になることもあります。医療機器に適用できそうな技術を持つ会社の投資プレゼンテーションが何週間か後にあるのですが、これは政府や自治体向けにも適用できるかも知れないと思ったので、私もこれに参加するつもりです。 私は会社では生命科学以外のものが主な担当で、実際にはゼネラリストと言った方がいいでしょう。私はネットワーキングのベンチャー、ソフトウェアのベンチャー、エネルギーのベンチャー、素材のベンチャー、あらゆるものに注目しています。少ない人数ですが、私たちの何人かは私と同じようなゼネラリストです。John Doerrも私がゼネラリストだと思っている一人です。他の人たちはもっと専門化しています。Ted Schleinはほとんどセキュリティ関連の投資ばかりをやってきていて、その分野では彼の投資ポートフォリオは非常に良好です。なので彼は専門化していると言えますね。 Bob: 私が気になっているのは、今まさに盛り上がりつつある、興味深いテクノロジーの分野なのだと思います。技術時代が移り変わるたびに、私たちは「おおクライアントサーバコンピューティングだ」「ネットワークコンピューティングだ」「ワークステーションだ」「ワイヤレスだ」と毎回鞍替えしてきました。今私たちは何から離れて、これからどこに入ろうとしているんでしょうか? Bill: 私たちは、物事が比較的単純だった時代から離れようとしています。現場ではエレクトロニクスの爆発的な普及があり、ムーアの法則があり、物事が非常に定量的に変化していました。最初に私たちはミニコンを手に入れ、その後にはパソコンを手にしました。そしてパソコンは20年くらいでしょうか、長い間にわたって小型化が進み、処理能力も向上し続けました。この小型化が進んで、ある日突然、電話機を作れるレベルを超えたんです。かつて自分が使っていたようなコンピュータの処理能力を持ち、しかもポケットに収まって小さなキーボードや小さな画面も内蔵していて、常に回線につながっているような携帯電話です。これは今までとは全く違う装置です。情報の側面から見ると、コンピュータはより形を認識しにくい -- 30年前の姿からほんの少しだけ変化した、同じような形のまま小型化しつつあります。より目に見えにくくなっています。コンピュータとの対話の仕方も変わっています。話しかけたりとか、さわったりとか。常に持ち歩けるわけではない鞄に入れて持ち運ぶのではなく、常に身につけておけるとか。こうして私たちは単一の軌道から別の軌道に移ったわけです。マイクロソフト、インテル、パソコン、という単一の波です。多少の生命科学、初期の遺伝学もそこにはありましたが。今では新しい科学技術や素材、あらゆる種類の機会とエネルギーがあります。生命科学における今までにない広い範囲の機会と、まさしくソフトウェアと他のあらゆる科学技術が合流することで、新しいことが可能になるんです。 Bob: すごい話ですね。これは元をたどっていけるものでしょうか? 進歩の一つ一つに至るまで、全部ムーアの法則にさかのぼれるように聞こえますが。 Bill: 今のはナノのスケールとか、ナノテクノロジーとか、そういう話ですね。本当に起きることというのは規模、つまりナノメートルとかオングストロームとかそういうスケールでさえないんです。今まで私たちは削り出しによって物事を設計していました。原子そのものを理解し、操作できるようになると、私たちは形を削りだしたり、設計したり、彫ったり刻んだりやすりがけをしたりするのではなく、物事の本質を理解して、積み上げるようにものを作れるようになります。 Bob: 削り出すのではなくて、成長させるわけですね。 Bill: その通りです。そのためには観察力よりも理解力が必要になります。生命科学に見られるように、一滴の血液を操作してその仕組みを理解する、ということをすぐに始められるんです。それを分解して、そこにあるタンパク質を全部チェックして、何か推論してみる。これは大変な量のデータです。あるいは原子構造の化学的特性を理解して、そこから新しい素材を設計するとか。たとえば、カーボンナノチューブの興味深い特性とか、ありますよね。 Bob: これはぜひお話ししたかったんですが、数週間前にRay Kurzweilに初めて会いました。同じ番組に出演したんですが、彼が私よりも先に話しました。私はその後でしたが。彼は最高の突っ込みネタを提供してくれて、私もきっちり突っ込ませてもらいました。ただ、彼は素材分野や技術一般に適用できそうな対数関数を拡大適用して、それによって未来を推測したわけです。その過程で、人間は働かなくても良くなるかも知れない、と彼は言ってのけました。この主張は私には考えもつかないほど飛躍していると思います。別の時に彼が言った言葉にも驚いたんですが、2029年には1000ドルで現在のコンピュータより10万倍賢いコンピュータが買えるようになる、と言う。賢いというのはどういう意味かわかりませんが -- 人間並みということです。こんなことは可能なんでしょうか? Bill: 彼のグラフを見るとそのようですけどね。私が思うに、まず私たちは人間がどれだけ賢いのかと言うことをまだはっきり解明していません。Jeff Hawkins(*Palm Computing創業者)が知性についての非常に興味深い本(*「考える脳 考えるコンピューター」)を新しく出版しましたが、その中で人類の知性について仮説を述べています。その仮説が正しければ、これは進歩と言えるでしょう。ただ、単に高速なコンピュータがあるからといって、私たちがそれに知性を持たせる方法を知っているわけではありません。高速であるほど、賢いコンピュータを作るのに役立つのは確かですが。私たちにできることには限界があります。あなたが会話することについて考えていて、私があなたに反応してもらえそうなことを話す -- あなたは前もって私が何を言うかを先読みしている。普通なら一秒もたつ前に話ができます。 Bob: まあ、今は何もしていませんよ。 Bill: そんなことはありませんよ。ともかく、コンピュータには一秒以内にこんな処理をすることはできません。あなたのハードディスクの中にどれだけたくさんの音楽ファイルが入っているか考えてみてください。私が1曲流したら、あなたは別の似たような曲をすごい早さで思い浮かべるはずです。そういうことができるように、コンピュータにデータベースを構築することもできるかも知れませんが、あなたはあらかじめデータベースを作ろうと決めなくてもそれができるんです。別の言い方をすると、あなたの記憶は後から思い出しやすいように何らかの複雑な方式で整理されているんです。そして私たちは莫大な量の情報を整理するための完璧な手段をまだ見つけられていない。だから -- たしかに、Googleは非常に良くできていますが、あれがどれだけ素晴らしくても、ある分野に本当に詳しい人に相談するのとはわけが違うんです。ただ、ある分野で起きていることを何もかも知っていると言う人はいませんから、時にはGoogleの方が有利ですが、たいていの場合Googleは本当に知識のある人の話にはかないません。 Bob: 実は先日、「The Wisdom of Crowds」という本を読んでいたんですが、これは読んだことはありますか? Boll: 話には聞いていますが、読んではいません。 Bob: 基本的には、どうも私たちはあらゆることを知っているんだけど、自分たち自身がそのことを知らない、という話です。 Bill: まあ何かの社会学的な意味ではそういえるのかも知れませんが、科学的な意味でそれが正しいとは思えないですね。 Bob: ええ。おそらく正しくないでしょう。この考え方が面白いと思ったのは、私が自分の音楽コレクションにマスク -- あなたがさっき言ったようなデータのマスクをかけているんじゃないか、と気づいたからです。自分のコレクションはいろんな分類で理解していて、ある意味フィルタをかけることができます。コンピュータならデータを取りに戻ってからフィルタを適用しないといけません。 Bill: ある種の質問とか、ある種の大衆にできることとか直感とか、Malcolm Gladwell(*The New Yorker誌のライター)の「Blink」みたいに、そういう類のものがあるんですが、これは私には -- こういうものは消費社会に経済的価値をもたらすのかも知れませんが、世の中には探し求めるべき質問、問題、真実が他にあるし、そこに今の話は当てはまらないと思います。 Bob: グローバル化の問題はどうですか。技術的問題かも知れないし、層でないかも知れませんが、あなたが気にかけている問題とはどんなものですか? Bill: そうですね、私の子供が責任感のある、幸福な市民に育つのを手助けして -- Bob: お子さんは何人? Bill: 私のパートナーとの間に4人子供がいます。 Bob: それは子だくさんですね。 Bill: ティーンエイジャーが二人と、11歳と9歳です。で、子供は昔よりも育つのが早いです。素晴らしいこと、意義のある重要なことができる人たちの手助けをするのは、私の仕事のなかの大事な問題を解決することにもなるんです。良い関係を持つこと。良い人生を生きること。ただ、仕事という観点でいうと、これはエネルギーや素材の分野に私が注目している理由の一つでもあります。この二つは明らかに差し迫った課題になっているからです。 Bob: まあそうですね、私たちは環境のことを考慮せずに、地球の石油を空になるまで掘り出して、燃やし続けている。 Bill: 私たちは前例のない実験をしているんです。今日の新聞に、海がどんどん酸性化しているという記事がありました。サンゴ礁の貝が崩壊していくんです。これは何の管理もされていない実験です。こんなことはやめたほうがいい。しかし人は大体自分のやりたいことをやってしまうものだから、そう望むこと自体、現実的とは限らない。私たちは経済的な力によってそういう風に突き動かされているんです。となると、一番いいのは今の進行方向を変えられて、しかも金になるようなやり方を見つけることです。あまりたくさんのエネルギーを使わないとか、もっと効率的にエネルギーを生産するとか、二酸化炭素をそれほど排出しない代替エネルギー源を見つけるのは、非常に前向きなことと言えるでしょう。そして私たちは太陽光とか燃料電池などといった、そういう問題を解決できるかもしれない革新的な新技術に注目しています。 Bob: 政治的な--について心配はありませんか? 男性: すいません、今の質問もう一回お願いします。 Bob: こういう活動について、政治的な文脈や反動を気にすることはありますか? 技術的にも同じことがあると思いますが -- Bill: 政治家は当てにしていません。少なくとも今のこの国の指導者層が、本気でこうした問題に取り組むことは期待していません。だから私たちは企業家の立場からやろうとしています。 Bill: そちらの方が話がシンプルだということですか? いいことをして金を儲けよう、というような。 Bill: (政府にできるとは)思いません -- 政府が指揮することはできるかもしれませんが、結局こういう問題を解決するには新しいアイディアが必要になります。後ろ向きな考え方をしない、むやみに足を引っ張らない戦略が政府から出てくれば、役に立つでしょう。しかしそれが出てこないなら、政府のプランよりうまくやってのけることで大もうけするチャンスはまだあると思います。だからうまくいけば、政治的な変化を待たなくても、この方向で成果を出すことはできるでしょう。 Bob: 基本的に情報技術を専門としてきた人から、このエネルギーと素材分野への方向性が出てくるというのは -- 私にはITの投資機会は昔ほどではなくなった、というようにも聞こえるんですが。 Bill: そうではないです。たくさんのIT系投資案件に目を通していますが、エネルギーと素材関連も関係しているんです。素材系ではその素材を理解して、型を作って設計するためにソフトウェアが使われています。エネルギー系では微細構造を組み立てるために、マイクロチップや、非常に薄い素材の層を作るための装置と同じものを使っています。これはたとえば、かつて高性能プロセッサやメモリチップの設計に関わったときに見たのと同じ、興味深い特性を持っています。Sunにいた後半10年か15年の間、こういう技術をいくつか利用して高度なプロセッサの設計を手伝っていたおかげで、その方面の知識が身に付きました。その延長で、薄膜をエネルギー分野に適用する、ということもあります。 Bob: Sunのことを懐かしいと思いますか。 Bill: ないですね。20年というのは長い時間です。Andy Bechtolscheimが会社に戻れて良かったと思います。彼はSunの創業者の一人で、Ciscoに移って、いくつか会社を立ち上げ、そして戻ってきました。彼はいくつかのすばらしい製品を持っていて、Sunが最近彼の会社を買収したほどです。私たちは実のところ -- Sunは彼の持って返ってきた製品から、一つかそれ以上のヒットをこの秋に得られるでしょう。これでSunもこの数年間よりはもっと景気が良くなるはずです。 Bob: Andyには商才があると? Bill: 彼は発明家としてだけでなく、投資家としてもすごい才能があります。彼はGoogleに小切手を書いた人物です。 Bob: 現金化するには会社を作らないといけない、という例の10万ドルのことですね。 Bill; そう、それです。あの話は -- あの10万ドルの収益率は非常に高かった。史上最高の投資ネタの一つですね。 Bob: 間違いない。彼は頭がいいし、運もいいと思いますよ。 Bill: まあ彼らはどういっていますかね? 運というのは機会と準備がうまくかみ合うと言うことです。機会がやってきたら、Andyは上等な機会に確実に気づくことを学んでいましたから、彼はシリコンバレー史上最高のベンチャー投資家の一人です。この話はまだ完全には語り尽くされていません。彼を探すと -- 彼の投資案件すべての中で、文章に残されたものはあまり多くありません。 Bob: 本当ですか。まだまだネタがあるんですか? Bill: 彼は世間が考えているよりはるかに多くのことを成し遂げたと思いますよ。 Bob: それは確かでしょうね。Andyはユニークな人ですから。 Bill: 本当にユニークです。彼はすばらしいハードウェアの設計者で、驚くべき人材です。会社の大きさに関係なく、投資案件が今まで話してきたようなたくさんの性質を持っているかどうか、とても迅速に判断できるんです。 Bob: なるほど。ただ、もしあなたが彼と同じように成功していたら10万ドルは大金ですが、彼が失敗したとしても大した損害ではないでしょう。 Bill: まあそうですが、彼は自分を訪れてくる人全員に10万ドルの小切手を書くわけではありませんから。本当にそんなことをしたら世界中の人がやってきて、彼は破産しますよ。確かに、彼に相談する機会を得られる人物は一定のフィルタを通っていますが、一般的に言えば彼は大きな可能性を持ったものに対してはとても敏感であることがわかると思います。私たちがKliner-Perkinsでやっているのと同じです。私たちはスケールの大きいアイディアを探していますが、同時に現実的な考えも持っています。彼はLarryとSergey(*(*Larry Page、Sergey Brin Googleの共同創設者)と、二人の検索やWebに対する考え方が、世界のすべての情報をインデックス化するという大きなビジョンであるだけでなく、非常に現実的なものだととらえたのでしょう。スタンフォードの計算機科学科から出てくるような非常に現実的なアルゴリズム つまり彼は情熱と実現性の両方を見いだしたということです。どちらも必須の要素です。 企業家今昔 †Bob: こういう新しく企業を興す人たちは、Sunにいたころのあなたとどこか違うところがありますか? Bill: 私よりも若いですね。 (笑い) Bob: まあ、それは悲しいけど事実ですね。 Bill: 本当に。 Bob: いや、経歴とかアプローチは同じですか? それとも何か違いがありますか? Bill: 彼らは大人になったし、数も増えています。彼らはパーソナルコンピューティングの時代に育ちました。彼らは -- これはITサイドの話ですが -- 1975より前の話、たとえばコンピュータの黎明期、ミニコンピュータやメインフレームの時代の知識があまりない。その一方で、エネルギーのプレゼン -- ここ数週間のエネルギー関連のプレゼンで見たのですが、誰かが言っていたことで、ここにある技術の年表があると。最初のプロトタイプは1896年に作られた。さらなる改良が1950年、続いて1975年と1993年に行われた。その理由は、こういうものの多くは材料科学が存在しなかった時代の化学、物理、数学を元にしたアイディアだったからです。本当に変わったこととはこれで、こういう古いアイディアを現実的なものにするために必要な材料を作り出す能力が私たちに備わった、ということです。なので、今後はこういう長い歴史物語も見ることになると思っています。 チームを率いることについて †Bob: あなたはどうやってチームを率いていますか Bill: チームを率いる、ですか? Bob: どういう風にリードしますか? つまり、どうやってチームを編成して、あなたが望むような目標に効率的に導きますか? こういうことは得意な人もいるし、苦手な人もいると思いますが。 Bill: まずチームには情熱が必要です。時にはプロジェクトをインキュベートして人を探すこともできます。たとえば、私に情熱があったとしましょう。自分と同じ情熱を共有してくれる人を何人か探して、彼らに情熱的に接したときに、彼らは私の求めるものとほんの少し違ったものや、大きく違ったものを見いだして、そのままそっちに進んでいくかも知れない。私はそういうもののどれかを拾い出してゴーサインを出すわけです。 Javaプロジェクトがちょうどそんなケースでした。つまり私自身にはオリジナルなビジョンはなかったのですが、私はチームのみんなと始終一緒にいて、彼らが有意なアイディアにたどり着いたんです。私は彼らが成功するような手助けはできましたが、自分が想定していたような技術の使い方はしませんでした。新しいアイディアを持ってやってくる人たちでもそれは同じことです。彼らには多少の情熱があります。それに多少の方向付けをすることはできますが、完全に変えられるわけではありませんから、普通はその方向付けは不完全なものになります。彼らはそのアイディアを売り込む方法を知りません。自分の最初の顧客には誰がふさわしいかもわかっていません。大きなビジョンはあっても、そのビジョンは大きな円であって、その円の中のどこかに、もっとずっと現実的なものがあるんです。そういう彼らを、その大きな円の中の現実的な何かへと誘導するんです。もし円から離れすぎてしまうと、何をやってもうまくいかないからです。だから率いる、ということはできません。できるのは舵取りと助言と、背中をつつくことくらいですね。 Bob: 群れみたいですね。 Bill: そうですね、猫の集団みたいなグループはまずいです。なぜかというと猫は群れる動物じゃない。バッファローがたくさんいるグループもだめです。あれは家畜ではありません。柵の中から出ずに、みんなで働けるものが必要です。どちらかというと群れみたいなものですね。 丸いテーブルはダメ! - Nerdy Bit †Bob: グループに最適な人数というのはありますか? Bill: あります。形成段階では、一緒にランチを食べられる人数でないとダメです。6人を超えると一つの会話を一緒にするのが難しくなる。8人が最大かもしれない。テーブルは丸くてはダメで、長方形であること。8人で円卓だと会話が一つでおさまらない。だから長方形の8人テーブルでないといけません。それが限界です。6人の方がいいでしょう。理想は十分に大きなビジョンを持っていて、全てを確実にうまく回せて、何かのプロトタイプを作り込める人を6人、でなければそれより少ない数の人を見つけることです。それ以上多いと、本物のマネジメントをやらないといけなくなります。それに方針を変えるのがとても難しくなる。みんなが休憩できるような並の大きさのテーブルに集まってちょっと話し合いをするくらいでは、方向転換はできないんです。 Bob: では6人の場合は、自分たちが間違いを犯したとか成果を出したということについて全員が合意できるのに対して -- Bill: ええ。 Bob: 8人とか10人20人になると、誰かがおふれを出さないといけない。 Bill: まあ他にも、その日にたまたま誰かがいないとか、誰かが出かけないといけないとか、そういうこともあります。そうなると物事の進みが遅くなります。修正をしたり、背中をつついたり、つつき続けて徐々に方向転換したりすることが非常にやりにくくなります。逆に3人とか4人とか、人数が少なすぎると、グループが問題を乗り越えるために必要な広い視野がない、という事態に陥ることがあります。短期間なら1人、2人、3人でやっていくこともできますが、作業を終わらせるだけでも、もっと人が必要です。とにかく時間が足りないんです。こういうことのほとんどには分類があります。異なるスキルを持った人々の集合が必要なんです。 Bob: 年を取って、さまざまな異なるグループで異なる役割を果たしていて、自分は寛容になったと思いますか、それとも逆に気短になったと思いますか? Bill: みんなが話を聞いてくれる限りは寛容ですよ。言い方を変えると、私が誰かと一緒に会議に出て、そこで自分の考えを話す。彼らが私の言うとおりに動かなかったとしても、私は彼らがちゃんと聞いてくれていると思っています。その限りでは私は長続きします。でもみんなが話を聞かなくなってきたら、それはわざわざ自分の時間をかける価値はないか、あるいは我慢するのをやめるか、物事を変えるか、自分は彼らを手助けするのに適した人間ではないということにするか、そのどれかですね。 ヨットを作る件 †Bob: それは納得できます。さて、今のあなたはベンチャーキャピタリストで、かつては -- あなたは自分が今でも技術者だと思っていますか? Bill: はい。 Bob: その方面で何か個人的に追いかけている関心事はありますか? Bill: その方面ですか -- Bob: どこかでコードをハックしていたりするんですか? それとも別の何か? Bill: いえ。ヨットの設計をしています。 Bob: 本当ですか。詳しく聞かせてください。 Bill: これは一つの計画でして、統合されたシステム設計を行うんですが、ささやかな数の人がヨットの上で生活する、という構想です。ヨットというか、大きなヨットですが -- 全長が100フィート以上あります。小さな島のように見えると思います。乗員が6人から10人、乗客は5人から10人です。全部で10から20人ですね。周りには塩水しかありませんから真水を作らないといけない。熱源も必要だし、冷却が必要な場所もあるし、移動できないといけないし、料理や掃除、汚水の浄化、船底のビルジ(汚水)の排水もある。油を船外に流してはいけないし、発電しないといけないし、排出物は極力少なく、発電設備や汚水などの処理プラントの隣で生活するわけですから、できるだけ静かに、騒音は出さないようにする。まあ、島みたいなものです。これは現在利用可能なあらゆるテクノロジーを駆使した、エネルギー能率の研究をする契機なんです。なので、たとえばヨットを移動させたいなら、単にもっと大きいエンジンを載せるのではなく、より少ない力と騒音で移動できる方法を考え出すんです。また大きなエアコンを載せるのではなく、断熱を強化します。大きなエアコンを載せたら発電機も燃料タンクも大きくしないといけないからです やがて断熱とその他の要素のバランスが見えてきます。このプロジェクトは1年ほど前に始めて、あらゆる先端技術を検討してきました。断熱材、窓、暖房、冷却、排熱回収型燃料電池、推進機能への生物医学の応用、空気力学。メンテナンスを最小限に抑えるために甲板のチーク材を本物の木材ではなくてプラスチックにする。エネルギー効率を上げるために喫水線を下げる。これは基本的に消費という側面での調査なんです。工場としてはほとんど機能しませんが、水処理あるいは真水生産プラント、浄水プラント、発電プラントといった消費や実用の面で、あらゆる複合技術を検討して、どうすればそういったものがより統合された、よりエネルギー効率の良い形で実現できるかを考えています。これはかなり大きなプロジェクトになっていて、ようやく設計が終わりかけているところです。 Bob: 5年か6年前なら、Jim Clarkが大きなヨットを作ったという話が真っ先に思い浮かんだでしょうね。 Bill: そうですね。 Bob: 彼はSGIとNetscapeの創業者で -- Bill: これはJimのヨットが作られたのと同じ造船所で作っています。 Bob: そうなんですか。それで -- おそらくあなたの目標は彼とは違うし、作る時期も当たり前ですが違います。あなたには10年分か5年分かわかりませんが、それだけ彼よりは有利な立場にあります。彼の船とあなたの船はどう違うんですか? Bill: 彼が注目したのは -- 私の友人も船を造ったことがあって、彼は人を呼び集めてみんなで快適に過ごせることに専念しました。彼のボートは私もとても気に入っています。みんなで集まって楽しい時を過ごすには最適です。とても狭いスペースで過ごすわけですから、濃密な関係が得られます。そしてJimがやってきて、彼はいろいろな自動化の仕掛けを組み込んでいきました。電子装備の部分は大きく改善されました。私はファンの騒音と臭いが大嫌いでして。いやな臭いには敏感なので -- Bob: お祖母さんの家に行くのはいやではありませんでしたか? Bill: そういう臭いには慣れてますから。このより多くのことをより少ない資源で達成する様々な方法について、Rocky Mountain InstituteのIngrid Logensと長年話をして、作業に関わってきました。彼らは第四の要素(Factor Four)と呼んでいます。投入するリソースは4分の1で、従来より快適な環境を得られるというものです。たとえば -- Bob: わらで船を作るんですか? Bill: そういうわけではないんですが、たとえば消費電力が少なければ、夜間は発電機ではなくて電池でボートを駆動できるかもしれません。そうすれば寝るときにうるさくない。世間では消費を少なくすると -- エネルギーを節約するには何かをあきらめないといけない、と思われがちですが、実はそうではないんです。この例で言えば、エネルギーと資源の消費を効率化できれば、その分快適になって暮らしやすくなるんです。それに、これはKliner-Perkinsでこの分野に投資をするための、セグウェイのようないい試金石なんです。私たちは自分のプロジェクトのために、あらゆる分野での先端技術を見てきました。私はヨットに適用できそうな技術の調査をフルタイムでしてくれる助手を雇っています。彼は自分の投資機会に多くを投じています。だからいろんな起業家が「どうやってうちの会社を見つけたんですか」と言って来るんです。私の調査助手がヨットのプロジェクトで見つけてくれた会社に投資に行っているわけです。 Bob: それは面白いですね。実に興味深いです。ベンチャーキャピタリストとしてこういうアプローチを取ることで、あなたは5年先の未来に生きているとは言わないまでも、5年先の未来のことを考えているわけですね。 Bill: 実際はかなり先の未来を考えていかないといけませんけどね。船の耐用年数は25年ありますから。 Bob: その船がですか? Bill: そうですよ。まあ、5年たったら改装するし、10年でまた改装します。私たちは常に使っている技術が再利用可能かどうかを追っています。土台は燃料電池を載せられるように設計しました。排熱回収機構と燃料電池を両方載せられれば、1年間で40%近く消費を抑えられます。でも2008年後半の進水予定日に間に合わせるには燃料電池がとうてい足りません。今、世界的に供給されているディーゼル燃料は硫黄が多すぎるからです。なので、現時点で燃料電池や、燃料の供給や、様々な燃料のエネルギーの内容や、排熱回収機構の実現可能性がどういう状況にあるのかについて、非常に注意するようになりました。それに、こういう分野でいろんな人が提案してきた奇天烈な技術は経済的には実現不可能なんです。ただ、将来そういう技術を適用する方法について、10年か15年単位の工程表を書くことはできます。そしてこのボートを外部からの改善案をオープンに受け入れるプラットフォームとしていきたいですね。 Bob: この船によって未来の船乗りの生活はどのように変わりますか? どんなモデルケースを想定していますか? Bill: そもそもの狙いは、これはたとえば -- この発案は第三世界の社会により適したものにしようとしていました。これが単なるヨットであったとしてもです。島であるが故に -- 真水も手に入らないような厳しい環境のもとで人が住んでいる島を考えると、地面から水を取り出して浄化しないといけないとか、太陽光をエネルギーにしないと生きていけないとか、そういう環境とあまり変わらないわけです。そういうところで -- Bob: 海に浮かぶ村ですね。 Bill: まあ、生存に適さない環境で生きて行かなくてはいけないわけですね。実際、動き回っていると、通常は船内温度や湿度の定義もできません。船は北半球にいるかも知れないし、赤道にいるかも知れない。だから船に乗っている人間にとっての環境を最小限の資源で作れるよう、バランスを取らないといけません。これには改良されたガラスや断熱材を使い、ある一定の -- 最小限のエネルギーで、必要な環境を作る方法を模索していく必要があります。 Bob: あなたの船は耐用年数が25年ということですが、つまりあなたは未来について楽観的だと言うことになりますね。 Bill: それはそうですね。 Bob: 楽観しているんですか? Bill: 見込みもありますし、危険もあります。9/11が起きてからは危険の方に注意をしていますね。もし危険があるなら、たとえば、これまでこういうことをしている人はいなかったら、これからもやらないだろう、と主張してもあまり説得力がありません。たとえば生物テロリズムの話ですが、これに対する防御の論理は「今まで誰もやったことがないから、たぶん誰もやらないだろう」でした。これはいいアプローチではない。私たちの前に障害はありますが、チャンスもあります。危険とチャンスは裏表の関係といえます。 Bob: 9/11以後、ベンチャー業界で、急にセキュリティデバイスを持って相談しに来る人が増えたりはしませんでしたか? 何かをかぎつけるような技術とか? こういうものが増えたりはしましたか? Bill: ああ、中身が何であれセキュリティとか国土安全保障(Homeland Security)に関係があると言えば、投資を受けられる確率は跳ね上がると思いますよ。国営の研究所で働く人々の多くは、セキュリティに関係があるということにしないとプロジェクトの予算が取れませんでした。そのうちにそういうシステムも出てくるでしょう。もちろんこの分野の投資は大きく増えています。何かをかぎつけるのと、実際に環境衛生だか民間防衛だかの組織に通知して人に影響を及ぼすのは別の話です。どれだけ高度であっても、技術だけできることには限りがあります。世界的な環境衛生の後退についてLauria Garrett(*科学・医療ライター)が著書(*"Betrayal of Trust")で書いているんですが、こういうインフラストラクチャへの投資は大きく減っています。 Bob: 仮にあなたがとてもまずいことをしてしまって、明日の朝に目覚めたら一文無しになっていたとしましょう。どうやってやり直しますか? Bill: 今の仕事が続けられれば十分満足ですよ。他には -- 自分が新しく会社を興していたら、と言う話ですか? Bob: そうですね -- Bill: たぶんソフトウェア会社をやっているでしょう。投資家になれなければ、たぶんソフト会社をやっています。自分はまたかなり腕の立つプログラマだからです。最近はあまりプログラムは書いていませんが。なので何か科学かweb向けのソフトウェアを書いているでしょうね。どっちかは何とも言えません。科学であれば生命科学ですね。この分野には、新しくソフトウェアを作って世の中を良くする莫大なチャンスがあると思うので。 Bob: ソフトウェアだけですか -- Bill: まあ、そうです。多少は科学として成熟しつつあります。クローズドの掲示板でコンピュータと一緒に話をするのはまだ複雑すぎますが、ロボットとか機械化とかいう話と組み合わせると、ソフトウェアはまさにぴったりです。遺伝子のようなものです。たくさんの部品にばらして、コンピュータに組み立てさせればいい。 科学教育の未来について †Bob: 以前あなたと、この国では科学や技術に関する職業に就く人が足りない、という問題について話したことがありました。これらの仕事にもう昔ほどの人気はなくなっています。もう時間が -- スプートニクから時間がたちすぎたのかも知れません。理由はなんとも言えませんが。これは実際、問題でしょうか? とてつもなく頭のいい大天才が12人もいれば十分なんでしょうか? 10万人のそこそこ頭のいい秀才が彼らを支える必要はないんでしょうか? Bill: シリコンバレーなら違うことを言うでしょうね。バレーの真の力は人同士の横断的な協力関係にあります。外に出て新しい問題を解決するための、仕事を始めるためのインフラがあるから、立派な仕事をするために自分の会社をむやみに大きくする必要がない。だから教育と訓練という意味では、私たちはいい方向を向いていないと思います。 Bob: どうやって直していけばいいでしょう? Bill: 理解しなくてはいけないのは -- よく私は、頭のいい人は均一に分布すると言ってきました。 Bob: 頭のいい人はみんなSunで働いてるんじゃないんですか? Bill: 頭のいい人が全員自分の下で働くわけではないし、人口一人あたりで考えれば、外国にも頭のいい人はこの国と同じくらいたくさんいます。それが -- 遺伝学とか環境とか、彼らが自分の能力に見合った訓練と教育を受けられるかどうかは別の話ですが、しかしもし中国やインドの人口が20億とか25億人いて、細かい数字はおいておきますが、こっちは5億人です。あっちの人口はこちらの5倍です。もしそのすべてが教育を受けたら、それは頭のいい人の数もこの国の5倍になるということです。今の状況のままなら、私たちの持つ創造的生産性が、私たちの5倍の人の持ちうる生産性と同じレベルになると考えることはできません。少なくとも当面は、この国の文化はあちらとは異なり、より企業家的な文化です。自由で活発な交流関係のネットワークでつながっている、企業や情報やbiotechという、シリコンバレーの強力な伝統もあります。ここ以上に企業活動に適した場所はありません。2番手がいたとしても大きく落ちるでしょう。でもそのアドバンテージは、私たちがこの国の最高の秀才たちを育て続けなければ、やがて失われてしまうでしょう。そうなれば、他国からやってきた最高の人たちも帰って行ってしまう。 Bob: この問題にとって移民はとても重要ですね。 Bill: それにアメリカの税関を通ると実に不愉快な目にあいます。人の扱いが -- 虐げられているような気分になる。だいたい、どうしてあそこで靴を脱がなきゃいけないんですかね。冗談にもなりませんよ。誰かが靴に仕込んだ爆弾で飛行機を爆破しようとしたから、全員が靴を脱がないといけない。いつまでこんなことをするのかわかりませんが。ものを隠せる場所は靴だけじゃないんですよ。なぜ靴だけをここまで警戒するのか -- どうして私の全身をX線の機械に通さないんですかね。 Bob: 重要な問題だと思いますよ。 Male: あと5分です。 Bob: わかった。さて、今私たちが進んでいる方向はあまりいい方向ではない、と。 Bill: 教育という点では良くないですね。科学と工学の分野でもっと人を訓練しないといけないと思います。Odeem ____(*名前聞き取れず)は科学や学校にもっと関心を持ってもらうための団体を作りました。しかし私たちは教育のことをまるで真剣に考えていない。教師にも安い給料しか払っていない。公共教育にも投資していない。数日前にTom FriedmanがNew York Timesに記事(*該当記事(有償)を書いていたんですが、それによると数年前にアイルランドで大学教育を誰でも無料で受けられるようにした。今ではアイルランドの人口一人あたりの所得はヨーロッパで一番だという。もちろん、このほかにも投資プロファイルの変更はたくさんありますが、この件はあきらかに労働力の質を変える鍵となる出来事です。私が見る限り、今の私たちはそういう方向と全く逆の向きに進んでいます。最終的にはそうなるでしょう。この国の教育を良くしていくというための変化が、どうも政治的な理由で行き詰まっているように見えます。しかし何もしないというわけにはいかない。 Bob: あなたならどうしますか? Bill: クリントン大統領が、希望する人全員が大学教育を受けられるようにする、という提案をしました。私なら賛成します。もちろん何らかのテストは受けないといけないでしょうが。怠けている人はその権利を失いますけど、本当に行きたい人は行けるようになるべきです。自分たちの未来のために、この投資はするべきです。 Bob: 全くその通りですよ。 Bill: 簡単なことです。 国の未来について †Bob: さて、そろそろ時間がなくなってきました。他に未来のために簡単にできることはありますか? Bill: 私たちは持ってもいないお金を使い続けるのをやめるべきですね。私たちは消費しすぎています。ものを買う以外にやることを見つけるべきです。これは致命的ですよ -- 勉強している方がよほど有意義な時間の使い方です。こういう文化が変わるのは難しいことです。しかしものを学んだり、問題を解いたりすることは私にとって一番やりがいのあることですから。Tom Friedmanが「水平な世界(*flat world)」と呼んだものの中で競争をしていくなら、私たちは問題を解くことに関心を持ち、企業家的になり、今はそうなってしまっていますが物質主義から距離を置かなくてはならなくなるでしょう。この国は消費者中心になってしまった。 Bob: 私たちは200年分の勢いを切り抜けつつあると思いますか? つまり、19世紀と20世紀に成し遂げてきたことのおかげで、この国は今ある場所に浮かんでいられる、と。 Bill: だいたい第二次大戦の後、世界はぼろぼろになりました。アメリカ大陸では戦争はありませんでしたから、そこで大きな優位に立つことができた。それとJohn Doerrが指摘したことですが、100年前に特許システムの変更があって、企業が発明するための環境がイギリスよりも有利になりました。イギリスは戦前の大国ですね。ここで気をつけなくてはいけない。私たちはリードしています。そして教育への投資をさぼっているから、数字の上では負けている。それと、企業家にとっての環境を悪化させてしまうと、たとえば____(*聞き取れず)のすべてからストックオプションを剥奪するとかですね。これは人が熱心に働いて富と雇用を生み出す動機付けを与えるための仕組みなんです。これを取り払ってしまえば、さらにこの国の勢いが失われます。これは明白かつ目前にある危機です。 Bob: あなたのヨットの全長はどのくらいですか? Bill: 50メートル、58メートルです。非常に大きいです。 Bob: あなたはこの大きなボートを作っている人、ということになりますね。 Bill: ええ。 Bob: ここで消費を削減するとか、自分の身の丈にあった生き方をするとか、そういう話をしてきましたが -- あなたはもちろんあなたの身の丈に合わせていると思いますよ。でも「いや、新しい素材について研究しているし、エネルギー効率も上がっていますよ」と言うのは -- これはちょっとうさんくさい話に聞こえますよ。まあその一方で、あなたは30年間熱心に働いてきたわけですが。 Bill: この船のプロジェクトからフィードバックが得られると思っていますよ。エネルギー技術の統合についての理解もその一つです。でもまあ、おっしゃるとおりです。これは道楽ですよ。 Bob: でも気持ちいいでしょう? Bill: でもプロジェクトをまとめるために大変な労力を費やしていますよ。もし自分が科学者やエンジニアでなかったら、私は設計者(architect)になっていたと思います。このプロジェクトも設計段階ですが、設計するプロジェクトは好きですよ。 Bob: あと1分ですね。これからの未来、どんなことに期待していますか。 Bill: 世界に良い変化をもたらす素晴らしい計画を持った人たちが、毎日事務所を訪れてくれることを思うと心が踊りますね。それと、この変化をもたらす企業家たちと働くこと。彼らの成功ストーリーに、より多くの人たちが感銘を受けて同じ道を歩むことを願っています。たとえば、KPCBやGoogleのような会社の話にはとても元気づけられます。過去に私たちが関わって成功したいくつかのビジネスと比べても、LarryとSergeはすばらしいロールモデルだと思います。彼らは成功したいと思っている。彼らはビジョン、素晴らしいビジョン、良いものに対するビジョンを持っている。そういう企業家の後ろ盾になれることは、大変うれしいことです。 自分で作ることと、Unixのこと †Bob: そしてあなた自身は、アーキテクトを尊敬しているとおっしゃっていますが、その意味で自分自身をアーキテクトと考えていますか? Bill: 私は実際にはソフトウェア設計者、あるいはハードウェアの設計者、と言う意味でのアーキテクトです。昔はもっと作ることもしていたんですけどね。いろいろなことに関わっていましたから。今は作る立場に立つのはどんどん難しくなっています。実際、25年か30年前にバークレーにいたときは -- Bob: 全部自分で作れましたよね。 Bill: 私はUnixを作っていて、ほとんどのプログラミングは一人でやっていました。今ではLinuxとLinuxのコミュニティがありますが、当時はそんなに人もコンピュータも多くなかったから、結構 -- もちろんとても楽しかったけど、ちょっと寂しかった。今あるようなコミュニティにいられたら、たぶん昔よりもっと楽しいでしょうね Bob: あー、オープンソースのことに一言も触れられませんでしたね。みんなに嫌われますかね。 Bill: そういえばそうですね。 Bob: まあ、今言いましたから。 Bill: ええ。本当に大昔、それをどう読んでいいかわからなかった時代から私たちはオープンソースをやってきました。しかしその本質は、人はお互いの成果の上にものを作り上げられるようになっているべきだ、ということです。学問の分野ではこれは成り立っています。論文を出せば、他人があなたの成果を知ることができて、さらにいい研究ができる。これがオープンソースの本質でした。一部の人にとってはそれ以上のものになってきて、今ではいろいろなバリエーションがあります。全部ひっくるめると大きなムーブメントですが、基本的な考えは、みんなが他人の足を踏みつけるのではなく、他人の肩の上に立てるということです。 Bob: 悪いことじゃないですよ。 Bill: ええ。これは本当にいいことなんです。 Bob: それだけじゃなく、最後まで取引という言葉は使わずに済みましたよ。 Bill: Johnも喜ぶでしょうね。 Bob: ありがとうございました。 Bill: こちらこそ。 補足情報 †Bill Joy named Partner at Kleiner Perkins Caufield & Byers Upsideとは何か [梅田望夫・英語で読むITトレンド]技術者出身の投資家、クライナーがシリコンバレーに残したもの ジェネラル・パートナー(General Partner):RBB TODAY (ブロードバンド辞典)
紙の文化・産業のピークは10年後?(Ray Kurzweilの予測を扱った記事) Ray Kurzweil(Wikipedia) Jeff Hawkins Wisdom of crowds 紹介(梅田望夫氏のblog) Factor Four (Amazon) 日本語の用語解説 Tom Friedman : The World is Flat(Amazon) IHOPは日本でも展開していたが、運営母体である長崎屋の倒産に伴い消滅した。 コメントはありません。 コメント/NerdTV翻訳/3-Bill Joy? |