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CCライセンスに基づく但し書き

本文書は以下の文書を原典として翻訳したものです。
http://www.pbs.org/cringely/nerdtv/transcripts/004.html

原典の著作者はRobert X. Cringely and PBSです。

原典はCreative Commons 2.5(BY-NC-SA) Licenseによって公開されています。
http://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/2.5/

本文書のライセンスは原典と同様、Creative Commons 2.5(BY-NC-SA)です。

本文書の著者はhir/福盛秀雄です。


本文書に関する但し書き

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翻訳作業用ページ


NerdTV #4: Internet Archive 創設者 Brewster Kahle


過去20年間の実績について

Bob: ええ、ブルースター、NerdTVへようこそ。

Brewster: ありがとうございます。よろしく。

Bob: さて、おそらくほとんどの人があなたの名前を知らないと思います。シリコンバレーやインターネット業界の人間なら非常によく知っているでしょうけど、そうでない人は知らない。そこで質問ですが、ナードとして自慢できることはありますか? 自分をナードたらしめるものは何でしょう?

Brewster: まちがっても知名度ではないですね。(笑い)自分のどこがナードか、ですか? まあ、大学時代はハッカーと言っていましたが -- それは技術それ自体を取り入れて、その行く末、よりよい世界を築くためにその技術を使ってできることを考える人々です。なので、なにかに自分の名前がたくさん入っているとか、そういうことではないですね。技術を使ってどんな面白いことや楽しいこと、人に注目されるようなことができるかが本質なんです。

Bob: はい。

Brewster: それで -- 技術に注目されても、必ずしもその後ろにいる人が注目されるわけではありません。私にとっては20か25年間、ずっとそういう方向で進み続けてきました。自分をギークなりハッカーなり、ナードたらしめるのはそういうことだと思います。

Bob: では話を20年戻して、この20年間何をしてきたかを教えてもらえますか?

Brewster: えっ。ええ、私はMITにいて、あそこでは技術を使ってどんなことができるかというアイディアが山のようにありました。これは70年代末のことで、まだ60年代のある種の理想主義が残っている時代でした。卒業する頃には、ここが入学したときより居心地のいい場所になっているかどうか見てみようじゃないか、という。そこで流行っているアイディアが2つありました。一つはプライバシー保護のための暗号化です。そのころの人たちは、理由もなくプライバシーを投げ捨てることに全く疑問を持っていないようでした。もう一つは電子図書館です。情報をあなたの手元に、といううたい文句を実現するアイディアです。世界にある全てのもの、国会図書館をあなたの机に、とかそういう類の言い方をしていました。

Bob: ええ。

Brewster: そこに情報を持つ、という種類のアイディアでした。それで、電子図書館というテーマは他の誰かがやるのがもう分かり切っていたので、私は暗号化の方を選んで、電話での会話をとても低コストかつ簡単にできるようにしようとしました。プライバシーを人々に提供するには、おそらくプライバシー以外の機能と一緒に提供しなくてはいけません。世間の人は自分のプライバシーを守ることにそれほど関心がないように思えたからです。

しかし -- そのためのチップの作り方や、プライバシーを提供する方法を学びました。しかしそれをRadio Shack*1で5ドルで売れるほど安く仕立てる方法が分かりませんでした。そのままでは2000ドルかかってしまって、そうするとプライバシーをそれほど必要としていない人にこれを売ることになってしまう。大会社とか、マフィアとか、なんというか、政府の秘密の部署とか、私の助力なんて必要ない人たちのことです。なので、じゃあしょうがないと。暗号化をやるのは難しすぎるから、これはあきらめて電子図書館の方をやろうと。そして、Danny Hillisがこの企画のために十分な性能のある機械を作る実にいいアイディアを持っていました。それで -- 1980年頃には、VAXが出回っていました。

あれは会計処理とか数字を扱うのは得意でしたが、本の中身を保存するとか、まして画像や映画なんかを扱うのは非常に不得意で、実際にやってみると本当に遅かったんです。当時は数十万ドル払って、ようやく1MIP、つまり1メガヘルツの機械しか手に入りません。これでは話になりません。役に立つものではありませんでした。で、Danny Hillisがスーパーコンピュータを作るための名案を持っていたんです。それほど難しい話でもなさそうでした。チップを組み合わせて、動かすだけだと。私はわかった、じゃあちょっと時間を割いてこういうものを扱えるコンピュータを本当に作れるか見てみよう、と言いました。このConnection Machineという機械のチップや基板の製作作業は全部自分でやりました。そしてThinking Machinesという会社をスピンオフして立ち上げました。そういう並列スーパーコンピュータを作る会社です。これは10年ほど続きました。しばらくはかなり好調でしたが、後年は製品をプログラム可能にするためにずっと苦労していました。最後には会社はつぶれてしまいましたが。

ただ、未来のありようをかいま見ることはできました。Xerox PARCが人々にとにかく処理能力の高いコンピュータを提供することにこだわるのはそういうことです。5年後にコンピュータがどうなるかはともかく、それを今すぐみんなに与えようよというわけです。当時私たちが使えたワークステーションは100万ドルしましたが、これを使って未来に起こるであろう物事を考えることができました。私たちはこのスーパーコンピュータにサーチエンジンをのせて、1ギガバイトの -- テキストにインデックスをつけられるようになりました。当時としては前代未聞の大きさです。こうしたサーチエンジンを完成させ、Dow Jonesなどの会社に設置することができました。それで気づいたことは、まあこうしてスーパーコンピュータの上にサーチエンジンを作り上げて、そこにはいい情報がたくさん入っているけど、でもそれで太陽の色が変わったりすることはなかったなあ、と。(笑い)

ですよね? ついに人類はあらゆる物事を横断的に探して、突き合わせができるようになったんです。できるようになったけど、でも広く普及したわけではなかった。問題は、じゃあなぜ使われないの? ということです。いろんな仮説がありました。ひとつは、その手のシステムを使うのに1分につき1ドルかかりました。1分1ドルでは精神科医の診察よりも高くつきます。なので、なんというか無駄話をするために知識をつけるような状態でした。もうひとつは、単にそこにふさわしい情報がなかったのかもしれない。私たちには分かりませんでした。それで80年代の終わりには、じゃあ一度考え直してみよう、どうすればいい? ということになりました。私たちの何人かは、インターネットサービス、80年代末期にはまだ国防総省や大学の管轄でしたが、その上にシステムを構築しようとしました。人々が自分の持っている個人的情報と、企業の情報、広域情報を一つのインタフェースに統合して、簡単に検索・閲覧できるようにする出版システムです。当時はアイディア自体が冗談みたいなものでしたが、80年代後半には、どうして企業の偉い人はコンピュータを使って問題を解決しないんだ、とよく言われていました。実際にはそういう使われ方はされなかったんです。

Bob: されませんでしたね。

Brewster: 普通は誰かを呼びつけて、さんざん議論をして、呼んだ相手が自分の言いたいことを理解して、彼らが図書館の本やデータベースを漁って、ようやくプランを作り上げますからね。私たちはThinking Machines、Apple Computer、KPMG、Dow Jonesとの合同プロジェクトを1989年に立ち上げました。これは初のインターネット上の出版システムです。名前はWAISと言って、世の中の人々がオンラインで出版できるようにしよう、という計画でした。図書館を作るには、まずみんながオンラインで出版できるようにならなくてはいけない、ということです。これはうまくいきました。みんなこれには非常に興奮していました。そこで1991年に、インターネット用のフリーウェア版を作りました。このオープンソースというアイディアは非常に気に入っていたんです。オープンソースというやりかたでどこまで行けるのかを確かめたかったので、ぜひやってみたかった。この汎用コンピュータという -- 80年代後半にはAppleのコンピュータとPCはもうあまねく普及していましたから、ソフトをタダでばらまけば他人のコンピュータを自分のアプリケーションに利用することができる。すばらしいことです。繰り返しますけど。今となっては忘れがちですが、昔はたくさんのコンピュータにたどり着くために大変な努力が必要でした。小売市場に切り込まないといけないし、それをどうやって流通に乗せるか、どうやってみんなに使ってもらうかを考えないといけない。これは悪夢以外の何物でもないです。でもここに来て、私たちは無料のソフトを作って、みんなにそれを使ってもらうことができる。あっという間に私たちのソフトは世の中に広まっていきます。これこそ私たちがやりたかったことでした。なので、私たちはクライアントソフトの無償版を作り、サーバー版も無償版を作って、たった一つのメールアドレスにそのお知らせを送って、これが広がっていくのをじっと見守っていました。これは -- もうお祭りでしたよ。みんながGopherサーバやwebサーバによく似たWAISデータベースを立て始めたんです。ただこれは初期のもので --

Bob: ええ。

Brewster: オープンなプロトコルとか、そういうものをベースにしていました。そして実にうまくいった。うちには一種の引力のようなものが生まれました。Appleのインタフェースの実装が残念ながら非常に遅かったので、フリー版のほうが広く使われていました。そしてNCSA、例のスーパーコンピュータセンターが、Mosaicを出しました。様々なプロトコルのモザイクなのでその名前が付きました。WAISプロトコル、Gopherプロトコル、それとwebプロトコルです。

Bob: はい。

Brewster: ある意味オールインワンのインタフェースですね。全てのシステムに接続するという発想でした。今度はこれが普及し始めて、webインタフェースは、当たり前ですが、とにかくはるかに優れていて、プロトコルもバイナリ形式ではないため、人々になじみやすいものでした。これも非常に成功しました。そこで私たちも、似たようなプロトコルを推進するのはやめにして、出版会社をオンラインに引き出すという仕事をするようになりました。オープンなインターネットに出版社をくくりつけてしまい、プロプライエタリな連中がやってきてもオープンな勝負をせざるを得ないようにしようとしたんです。それでEncyclopedia BritannicaWall Street Journal、Dow Jonesは引き続き残って --

Bob: はいはい。

Brewster: New York Timesアメリカ政府印刷局ホワイトハウス、これをみんなオンラインに接続しました。そうやってオープンな世界につなげとめようとしたのが91年、92年、93年のことです。MicrosoftはAOLをつぶそうとする中で対インターネット戦略を変えたんですが、それは「このオープンなインターネットなるものはかなり成功しているぞ」という、独占企業側の意識の表れでした。AOLもインターネットにつながるゲートウェイを作ろうという方向に多少傾いていました。私たちは、これならいけると思いました。94年には、オープンな枠組みは非常にうまくいっていて、出版業者は我先にそこに乗り込んできて、あり合わせの仕掛けを使ってそこで商売をしようとしていました。私たちは最初の広告 -- 初の広告基盤システムをCMPと立ち上げ、Dow JonesやWall Street Journal向けにアクセス制限付きのサービスを開始しました。購読ベースで収入を得られるように、ネット上で公開することでお金を得られるようにしよう、ということです。

Bob: はい。

Brewster: 94年までは、これはうまく回っていました。なのでこの会社をAOLに売却しました。つまりWAISの跡を継いだ会社をAOLに売って --

Bob: なぜですか?

AOLはインターネットになれたかも知れなかった - The Juicy Bit

Brewster: なぜかって? 私がAOLについて気に入っていたのは、ちゃんと機能するビジネスモデルを持っていた点です。彼らは -- 80年代や90年代の初期には、AOLは利用者に1時間あたり6ドルくらい課金していて、その総収入の10%から15%が、利用者が求めるエクスペリエンスを提供しているコンテンツ提供者に配分されていました。

Bob: はい。

Brewster: これはロイヤリティモデルです。

Bob: ですね。

Brewster: これは広告ベースのモデルではない。ロイヤリティベースのモデルです。だからAOLの世界では、とにかく人気を得れば、より多くの収入が入るわけです。これはすばらしいビジネスモデルですよ。もう最高です --

Bob: (笑い)

Brewster: 本の業界でもこのビジネスモデルがありました。私は図書館とか本とか、その辺のもろもろの発展の経緯にずっと関心を持っているんですが、このモデルは1600年あたりに発生しました。で、第2次世界大戦、あるいはその少し後まで、書籍業界はとても、非常にうまく回っていました。本を書く人はたくさんいて、印刷業者も、出版業者も、書店もたくさんあった。そこにはコントロールを握っている人はいなかった。非常に簡単なユーザーエクスペリエンスの仕組みがあって、それは本を買うといくばくかのお金が流れをさかのぼっていくんです。

Bob: はい。

Brewster: 本はとにかくうまくいった。私はそれと同じことをインターネットでもできるんじゃないかと考えました。それに10%から15%のモデルも気に入りました。それで、AOLと組んでこの一般的なモデルにもっとたくさんのコンテンツ提供者を引き込もうとしました。

Bob: ええ。

Brewster: しかし、このころはちょうどAOLがとてつもない規模に拡大している時期で、彼らは方向転換をしたんです。彼らは「コンテンツを得るためにコンテンツ提供者に金を払うべきではないのかも知れない。うちの顧客(*アイボール)にたどり着きたいなら、向こうが我々に金を払うべきではないか」と考えました。このアイボールというのは90年代末のすばらしい表現ですね。

(*) アイボール(eyeball)=目玉=インターネット視聴者

Bob: はい。

Brewster: で、彼らは物事をひっくり返して、ケーブルテレビのモデルに傾き始めました。うちは十分たくさんの客を抱えているから、うちの客までたどり着きたいなら金を払え、そういうモデルです。

Bob: ええ。

Brewster: これはロイヤリティモデルを吹き飛ばしてしまった。そして彼らはロイヤリティモデルを止めました。少なくともweb上のものについては一切このモデルを使っていません。

Bob: はい。

Brewster: 私たちはwebと彼らのビジネスモデルを組み合わせて、とてもうまい仕掛けを作ろうとしていたわけです。彼らはインターネットそのものになれたかも知れなかった。


でも彼らの決断は違いました。彼らが間違っていたとは私には言えません。Steve Case*2は私たちから学ぶべきだったとか、こうするべきだった、なんて言う立場には私はありません。ただ -- ただそれは私たちが求めていたものではなかった。それは私がネット上で作り出したいものではなかった。こういうもののためにわざわざコンテンツ提供者を引き込んだのではないんです。だからこの決定が下った後、私は会社を辞めて --

Bob: はい。

Brewster: -- Steve Caseに「本当にこんなことをするつもりですか?」と話を持ちかけました。

Bob: その後「だから言っただろう」と彼に言う機会はありましたか?

Brewster: いやいや、だから言っただろう、というような話ではないんです。彼らは本当に頭のいい人達です。

Bob: ええ。

Brewster: それに彼らは非常に成功した。

Bob: ええ。

Brewster: 実際ですね、AOLはすばらしいサービスの集合へと花開いたわけですから。だから言っただろうなんて、とんでも -- いや、これは私の個人的な意見ですし -- いや彼らは私よりもずっと賢いですから。だからそういうことはないです。

Bob: 本当にですか?

Brewster: 本当ですよ。

Bob: でも最近は景気が良くないように見えますよ。

Brewster: 会社ってのはいつも景気悪そうに見えるものですよ。調子は上がったり下がったりしますから。会社が衰えていくからといって、その会社の経営者にくってかかるようなことはしないよ、ということです。

Bob: わかりました。

Brewster: で、AOLはいい会社だと思いますよ。あのころは非常に大きく成長していた。ただ -- Time-Warnerの買収を振り返ると、ちょっと何とも言えない物がありますが -- あれはひどく困難な道のりにしか見えませんでした。ただ企業買収というのはいつだってそういうものですから。私にはわかりません。結果はこれから見えてくるでしょう。

Bob: それで、あなたはWAISをAOLに置いていった。

Brewster: AOLと、図書館を作るというアイディアそのものですね。出版業者は十分に集まった、その時流からは離れることになりましたが、一つだけ大きな心残りがありました。本当に良いビジネスモデルをインターネット上に整備しなかったということです。基本的には失敗でした。広告はありましたが、広告というのはテレビや新聞や雑誌みたいなものに行き着きます。こういうものをコントロールする会社はあまり多くありません。

Bob: そうですね。

Brewster: それで、広告ベースのシステムでは、多数から多数へ、そこからまた多数へという、私たちが本気でインターネット上で実現しようとしていたものを実現できません。なので、あのインターネット時代を離れるときに一番残念だったのはこのことです。広告にとってよりよいビジネスモデルを整備できなかったということです。今に至るまで私たちはそのおかげで不利益を受けています。これは --

Bob: ええ。

Brewster: 営利活動という意味では、分散環境の中でお金を稼ぐ個人よりも、巨大なプレイヤーのほうに有利に働きます。今あるのはお金を稼げない個人の分散環境だけです。今のインターネット上にあるビジネスモデルは、控えめに言ってもその程度でしかありません。これは本当に悲しいことです。

Bob: お金を稼いでいる人の分散モデルですか。

Brewster: 稼いでいない人です。(笑い)稼いでいる大企業はたくさんいますね。

Bob: ええ。

AlexaとInternet Archive

Brewster: で、私たちは -- 当時そういう立場にあったわけですが、このモデルとでも言うべき物を推し進めるためにはあまりいいポジションではないなと感じていました。じゃあしょうがない、この今の立ち位置のどのへんにオリジナリティがあるだろうかと。そもそものアイディアは図書館を作ることでしたから、じゃあそれをやろうじゃないかと。これが1996年の初めでした。Netscapeは株式公開して、AOLとMicrosoftはこのオープンなインターネットなるものに順応しようとしていて、多くの出版業者が市場に乗りだしていて -- いろんな事がとてもいい感じに動き始めていました。そこで考えたのが、じゃあ今まであまり収集されてこなかった、賞味期限の短い(*ephemeral)素材を集めてみようじゃないか、と。それでwebから手をつけることにしました。同時に2つの組織を立ち上げました。一つはInternet Archive、 もう一つはAlexa Internetです。同時に非営利組織と営利組織の両方を立ち上げたんです。ピーン! と。 最初に両者の間でこういう契約を結びました。Internet ArchiveはAlexa Internetが収集した全てのデータのコピーを、6ヶ月遅れて受け取ることができる、というものです。

Bob: はい。

Brewster: これは6ヶ月待つと商業的価値がなくなるということです。死後70年とか100年とか、そういうことはありません。

Bob: ええ。

Brewster: 著作権は100年ですけど。

Bob: ええ。

Brewster: こっちは6ヶ月です。

Bob: はい。

Brewster: で、ですね。商業的要素がそぎ落とされた後、情報はInternet Archiveに移るんです。Alexa Internetはネットのカタログになるべくデザインされました。サーチエンジンの処理するデータが増えすぎて、言うなればダメになってしまったときに、ナビゲーションの手助けをするためのものでした。

Bob: はい。

Brewster: でもふたを開けてみると、世の中のサーチエンジンは今でも絶好調で --

Bob: はい。

Brewster: 何十億ものページを処理しています。これは完全に予想外でした。私はもう何年も何年も何年も検索関連の仕事に関わってきましたが、これらのサーチエンジンはいまだに驚くべき事をなし遂げています。メタデータをベースにすることで --

Bob: はい。

Brewster: 次に来たのがメタデータでした。この単語は -- Bill Dunn*3が提唱したものです。彼は私のメンター(*mentor 師匠)の一人でした。

Bob: それは初耳です。

Brewster: 彼はDow Jonesにいたんです。

Bob: はいはい。

Brewster: 彼はDow Jonesに勤めていて、いつもメタデータはデータそのものよりも重要だと言っていました。80年代半ばにこんなことを言っているわけですから --

Bob: それでメタデータ --

Brewster: 彼は -- 彼はもう変人ですよ。

Bob: メタデータというのはデータのデータ、ということですね。

Brewster: データのデータです。Googleはある記事にどれだけの人がリンクを張っているかをランキングの仕組みに使っています。

Bob: はい。

Brewster: ですよね? これが大事な -- 彼らはこうやって記事が重要かどうかを判断しているんです。記事の内容によって判断しているわけではない。

Bob: はい。

Brewster: 他の人が記事についてどう思っているかです。これがメタデータです。

Bob: はい。

Brewster: Alexaもメタデータを元にしています。このサイトを訪れた人はこの別のサイトも見ている、というものです。

Bob: はいはい。

Brewster: 人の足跡をネット上の記事の重要度を見付けるメカニズムに使うわけです。Amazonが始める前、Googleが生まれてもいない時代に、初の共同作業的なフィルタリングを --

Bob: はい。

Brewster: Alexaはそういう道を進んでいて、それをツールバーを通じて一般に提供していました。

Bob: それはどうやって調べるんです? その通り道をどうやって追いかけるんですか?

Brewster: あるページを見ていると、「他にこんなページも見てみるといいですよ」と利用者に提案するツールバーを作りました。

Bob: はい。

Brewster: これはギブアンドテイクでして。ユーザーへのギブは、webサイトを見に行くとページを辿るたびにこのツールバーの表示が変わります。あなたは今このサイトのここにいます、他にもこんなページを見てみるといいかも知れません、という情報を見せます。これをどうやって実現していたかというと、このツールバーがユーザがこのページを見た、じゃあ何をユーザに見せればいいか、というリクエストをうちのサーバに送っているんです。

Bob: はいはい。

Brewster: 副産物として、みんながどのページを見ているかが分かるというわけです。個々の識別はしませんでした。

Bob: はい。

Brewster: 私たちはどれだけの人がどのサイトからどこへ移動していくかを見たかったんです。ここから分かったことは、みんなつまらないサイトを見限るのが非常に得意だということです。(笑い)彼らはとにかく -- 一つのwebサイトに長居をすることがありません。

Bob: はい。

Brewster: これはもう見てられませんよ。(*pathetic)世間というのは -- そういう意味ではバカじゃありません。

Bob: はいはい。

Brewster: そういうわけで、人の足跡を追っていけば、なにか特定の用事があるときに --

Bob: はい。

Brewster: どのサイトが長居するに値するのかを知ることができるんです。

Bob: はい。

Brewster: そして、これをまるごとデータマイニングすると、人々の役に立つサービスを立ち上げることができます。これは -- 私は -- まだ動いていて、たぶん何十万人もの人たちの役に立っています。

Bob: ところで、それはネット全体について何かを評価するサンプルとして十分な数なんでしょうか?

Brewster: 見たところ十分そうですね。Alexaのデータの使い道の一つに、人々のwebでの活動の集中具合の調査があります。ここで分かったのは、webでのクリック数の20%はたった10個のサイト上に集まっているんです。

Bob: へえ。

Bob: Wow.

Brewster: これは -- 世界全体での話です。

Bob: はい。

Brewster: なので、web上での力の集中度は、ローマ帝国以来見られなかったほどのレベルにあるんです。

Bob: じゃあその10のサイトというのは?

Brewster: ええ -- 時間が --経っているので、

Bob: ええ。

Brewster: 多少変わっていると思いますが。

Bob: じゃあそのいくつかは?

Brewster: 基本的にはポータル、サーチエンジンです。

Bob: はい。

Brewster: こういうところはあまりお金を稼げているわけではないんですが、それがどうしてあんなに -- 高値で売れるのか、なぜあんなに高い評価を受けるのか、不思議に思う人もいると思います。

Bob: ええ。

Brewster: これが理由なんです。

Bob: はい。

Brewster: 実に多くの人がサーチエンジンを通りすぎていたんです。続いて -- 上位100サイトがトラフィックの40%を占めていました。上位1000サイトで60%、1万サイトで80%です。これが対数曲線のような線を描いていて --

Bob: はい。

Brewster: 非常に平坦なグラフになりました。興味深いことは、一つはごく一部に多くの力が集中している一方で、今時の言葉で言えば、非常にしっぽが長い(*long tail)んです。

Bob: はい。

Brewster: これは -- 全トラフィックの残り20%は何十万ものサイトに散らばっているということです。

Bob: はい。

Brewster: これが面白いところです。読んでいるかいないかが全てである雑誌や新聞とは違います。

Bob: はい。

Brewster: つまり、こんなに数が多いのに、テレビのようには多くない。これは -- しっぽが長いということです。もう一つ面白いのは、非常に曲線が平らだということです。何かいいものを誰かが持っていたら、その連なりを上っていくことができる。その中にいなければ何もできないような、小売りの流通機構と違うところですね。

Bob: はい。

Brewster: 既存の機構を破るのは非常に困難ですが、それでもネットを使えばそこに割り込みやすくなります。本当にいいサイトを持っているなら、その道を上がっていって、より多くの注目を集めることができます。たとえばここ数年Googleがやってきたようにですね。なのでこれは、 -- 利用者のログを研究することで、ネット上で起こっている出来事の興味深い概観を知ることができるんです。これは匿名化されていますから --

Bob: そこで --

Brewster: 怖がるようなことはありませんよ。

Bob: その情報を使って何をするんですか?

Brewster: Alexaでやっていたのは、ツールバーを提供して --

Bob: はい。

Brewster: このページを見ていたら、こっちのページも見てみるといいと提案することです。

Bob: はい。

Brewster: そういう状況でした。本当にそれだけです。

Bob: はい、それで -- Alexaにはビジネスモデルはあったんですか?

Brewster: このツールバーを使って、特定の広告に接触できるようにする、という意図がありました。

Bob: はい。

Amazonとの関係

Brewster: 私たちは広告を売ろうとしたんですが --

Bob: はい。

Brewster: これは結局うまくいきませんでした。

Bob: はい。

Brewster: うまいやり方がわからなかったんです。結局会社をAmazon.comに売却することになりました。

Bob: はい。

Brewster: 彼らはおおむね、安価にデータマイニングができるという可能性に関心を持っていました。そこはいいですか?

Bob: ええ。

Brewster: なぜかというと、Amazonはもっと大きなデータを解析したかったんです。それでデータマイニングが得意なのはどこかと探し始めたら、Alexaが見つかったと。Alexaはwebの規模でデータマイニングを行うノウハウを持っていました。これは世に出ている書籍の数よりもはるかに大きなものです。

Bob: はい。

Brewster: それでAmazonはAlexaに興味を持って、買収したんですが、会社そのものはAlexaという名前のまま、別会社として存続させました。ある意味、社内コンサルタント的に利用する、という感じですね。

Bob: じゃあAlexaはまだこの建物にあるんですか?

Brewster: AlexaはまだPresidio(プレシディオ・オブ・サンフランシスコ)にいます。うちはPresidioのここにいますが。

Bob: はい。

Brewster: ここはInternet ArchiveとAlexa両方が最初に入居していたビルです。Alexaが大きくなってから、Presidio国立公園の中にある別のビルにも広がりました。

Bob: 今でも6ヶ月の遅延はあるんですか?

Brewster: もちろんです。

Bob: へえ。

Brewster: これはもう最高ですよ。それでJeff Bezos*4は -- 買収されるときに話をしたんですが、すばらしい人物でした。自分がやったAOLとの買収話をしたんです。それをどうやって -- 企業買収を成功させるのはかなり大変なことです。彼は「まあ自分には分からないが、あなたは一度経験したわけだ、あなたならどうすればいいと思う」と言ってきました。私は「会社を経営することはできますけど、部門の運用はわかりません」と答えました。

Bob: はい。

Brewster: で、彼は「わかった、じゃあ一企業のような作りにしよう」と言ったんです。

Bob: へえ。

Brewster: 私は「それで、もう一つお知らせしなくてはいけないんですが、実はある取り決めがありまして」(笑い)で、彼は「6ヶ月か。ちょっと短いかも知れないけど、私は構わないよ」と答えました。

Bob: 本当ですか?

Brewster: ええ。

Bob: 彼は善玉の一人ですね。

Brewster: Jeff Bezosは本当にいろんな意味で刺激を与えてくれる人です。Alexa Internetが1999年に買収されましたが、それでも私はさらに3年間残り続けました。もっと大きなものの一部になると分かっていて仕事を続けるのは、つらいこともあります。

Bob: そうですね。

Brewster: ただ、彼はある程度余裕を残してくれたので、仕事自体は面白いものになったし、刺激にもなりました。彼は面白い人物ですよ。

Bob: ですね。そういえば、かなり前に彼にインタビューをしたことがあります。そろそろまたインタビューをしないといけないですね。

Brewster: ええ。いや彼は -- すばらしいですよ。

Bob: はい。

Brewster: それで、私は -- 私はこの業界の最高の人たちと --

Bob: ええ。

Brewster: 一緒に仕事ができてとても幸せでした。これは -- 本当にすばらしい。

Bob: でも今のあなたは労力を全部Internet Archiveにつぎ込んでいるんですよね?

Brewster: そうです。今が非営利部門をもう一度軌道に乗せるのに最適な時期なんです。変な話ですけど。1991年に、私はある会議に出ました。そこで手を挙げて、「私は見本誌(*token)ドットコムです。あなた方のような出版社が、ネット上で本を出して利益を上げるお手伝いをするために来ました」とぶちあげたんです。それに対する反応はというと -- まあお分かりでしょう -- なぜかというと、これはまだ時代がアカデミックだったからです。

Bob: ですね。

Brewster: それに政府の人にとっては、営利という観点そのものが前例のない話でした。今では完全に逆になっているようですけどね。私は見本誌 -- 見本誌.orgです、という。(笑い)私は共有の財産(*commons)をより安全に持てるようにしようとしています。そうすることによって、コンピュータ業界の古い伝統が、世間一般で図書館のように支持されるようにしたいんです。それで、私たちは図書館のシステムが本当に完成されていくよう、共同作業をやっています。なのでInternet Archiveは非常にすばらしいものになっています。非営利でやっていくということも、とても興味深いものです。単に株主の利益だけでなくて、もっと複雑なモチベーションを持つことができるからです。

Bob: はいはい。

Brewster: たとえば、こう --

Bob: いや、株主利益なんてないじゃないですか。

Brewster: 株主がいませんから。まったくいないんですよ。この組織のミッション達成のために努力するわけです。しかもその目標達成のために税金も優遇されます。

Bob: ええ。

Brewster: これは -- とても嬉しいことですね。世の中の物事をよりよくするために幅広い関心を持つことが許されるわけです。どう良くするのかはその人の考え次第ですが。

Bob: ええ。

Brewster: で、Internet Archiveは実にすばらしい。ええ -- 私たちはwebから始めたんですが、これをWayback Machineから利用できるようにしました。

Bob: はい。

Brewster: その後、テレビをアーカイブするTelevision Archive*5 という別組織をスピンオフしました。誰もテレビを広範囲に配布する、というアイディアをやっている人がいなかったからですが。そして本、音楽、それとビデオもやり始めました。私たちは、世間に向かって共有したい素材、広い意味でのライブラリに納めたい素材を持っている人たちに、無限のストレージと帯域を永遠に、無償で提供します、という提案をしています。

Bob: とんでもない提案ですね。

Brewster: とんでもないです。何が狙いかというと、少なくともこの国ではですが、ものをただでばらまくことにコストがかかってはいけない、ということになっています。(笑い)一般あるいは非営利の何かにものを提供する場合、ものを寄贈することにコストがかかるだけでなく、よくやったご苦労さんと背中を叩いてもらえて、税金も優遇してもらえます。でもインターネットの上ではそれがありません。

Bob: はいはい。

Brewster: なにかをただで公開して、それが有名になったら、破産してしまうかもしれない。

Bob: ですね。

Brewster: 通信費用がかさんで家を売るはめになるかも知れません。Slashdotにリンクを張られただけで、それが人生最悪の日になるかも知れないわけです。こんなバカな話はありませんよ。これは文化の正しいありようじゃありません。

Bob: ええ。

Bob: Yeah.

Brewster: ですよね? もしロイヤリティシステムがあったら、自分のものが有名になったら、その --

Bob: ええ。

Brewster: インターネット上で使われるたびに、その利用料をもらえるようになる。これは大変結構なことです。

Bob: ええ。

Brewster: でも世の中は完全に、しかも陰険な形で誤った方向に向かってしまいました。私たちはこのライブラリを基本的に無償でコンテンツを置ける場にすることで、この穴をふさごうとしています。

Bob: それは -- ええ、どうやって実現するんですか? つまり、課題が二つあります。一つは技術的な問題です。

Brewster: ええ。

Bob: これは大変な試みです。

Brewster: とても大きな話ですよ。

Bob: もう一つは -- 経済的な問題です。どうやって費用を捻出するんですか?

とにかく倹約すべし

Brewster: 私たちの財務に対する基本的なアプローチは、とにかく倹約すべし、です。つまり、みんなが使っている企業製ソフトウェア、それが何であれそれを捨てられるくらいに、ただひたすらに安価であるべし、ということです。私たちは他の人がかけるコストの1%で物事をやろうとしています。それでほぼ必ず10%まではコストを下げることができています。

Bob: はい。

Brewster: 私たちは -- 1/10にまで下げられます。本当にうまくいけば、1/100まで下げられる。私たちの存続の鍵となる性質はこの安く上げるという点にあります。

Bob: はい。

Brewster: これは初期のインターネットから学んだことです。自力で非営利の -- 会社を立ち上げるというのは、つまりWAISがそうでしたが --

Bob: はい。

Brewster: 市場の外にあった --

Bob: はい。

Brewster: これはコストを低く抑えるという点で非常に先見の明がありました。立ち上げにあたって、その、わあわあうるさい取り巻きが少ないわけです。

Bob: はい。

Brewster: そこで、人々が自分を必要とする、という状態を確実に維持しようとします。

Bob: はい。

Brewster: そして求められていることをやり続けます。そういったことを学んで、その道を進み続けました。そのうちに、これを際限なく増えていく情報に適用しなくてはいけなくなった。Webをアーカイブしたいと思ったら、いったいどうやってこれを安く上げればuいいのか?

Bob: はいはい。

Brewster: 私たちは常により安価なテクノロジーを探し続けてきました。

Bob: たとえば?

Brewster: そうですね。テープの話からしましょう。テープというのはとにかく気が滅入るテクノロジーです。

Bob: はい。

Brewster: なのでハードディスクを使うことにしました。

Bob: はい。

Brewster: これは -- どうやってハードディスクを使うか、コンピュータの中で回転させ続けるか。ただし安く。そういったことです。

Bob: ええ。

Brewster: 基本的に、私たちは数年ごとに自分でコンピュータを作り上げてきました。Googleが自分たちのために使うに至ったものを、私たちは何年も前にとっくに使っていたわけです。クラスターは非常に安価なテクノロジーです。

Bob: はいはい。

Brewster: 機械同士の接続にはDanny Hillisのアイディアを採用して、その辺で手に入るものを集めて積み上げて、トラブル発生にはとにかく慣れる。

Bob: はい。

Brewster: それが私たちのテクニックです。数年前には実際に -- 1ペタバイトを達成する必要があったんです。メガ、ギガ、テラ、ペタと続くわけです。

Bob: はい。

Brewster: 100万ギガバイトですね。私たちはペタバイトのシステムが必要でした。それでSunやHPやIBMにいる友達に、なにか使えるものはないかと聞いたんです。でもほとんど何の答えもありませんでした。Sunは実は数年前に私たちと検討したものをベースにシステムを作っていたんですが、まだこれは立ち上げられる状態ではなかった。

Bob: はい。

Brewster: なので、自分で作らなくてはいけませんでした。

Bob: はいはい。

Brewster: 自分で作ったんですが、これは常にハードディスクのコストに対してどれだけのオーバーヘッドがあるかを常に計測しています。

Bob: はい。

Brewster: ですので、ハードディスクのコストよりも下がらなければ --

Bob: はい。

Brewster: とはいえ、その他すべてのものについては --

Bob: はい。

Brewster: そこに40%か50%のオーバーヘッドが常にあるんですがね。

Bob: ええ。

Brewster: CPU、ネットワーク、ラック -- その他全部です。これを私たちは設計していて、Petaboxと呼んでいます。そしてこれをオープンソースとしました。なので実際のコンピュータそのもの -- 金属、部品、もろもろ全部 --

Bob: はい。

Brewster: これがすべてオープンソースです。私たちはこれを作るために、小さい会社をスピンオフしました*6。Petaboxを外部向けに製作するという仕事で、この会社は実際に拡大しています。なぜかというと、他の誰もやり方を知らなかったからです。私たちの鍵は、節約することにあります。

Bob: はい。

Brewster: ここへの資金は基金、政府の援助や契約、さまざまな形の企業からの寄付でまかなわれています。

Bob: はい。

Brewster: Amazonのように -- 彼らは子会社のAlexaを使っていますが --

Bob: はい。

Brewster: アーカイブに寄付をしている人たちがいる。それがわたしたちの生き延びる道なんです。

Bob: はい。

Brewster: そして基金はプロジェクト立ち上げ時の資金調達の足しになります。

Bob: はい。

Brewster: 政府契約はというと、私たちは国会図書館、国立公文書館、大英図書館、フランスの国立図書館向けに仕事をしています。これらの図書館はみんなweb検索を自分がやるかわりにInternet Archiveに委託する契約をしています。

Bob: はい。

Brewster: フランスは.frドメイン全部を欲しいと言いました。Internet Archiveはこれをクロールして、今はパリに設置されているPetaboxに提供しています。これは -- 以前からうまく回っています。さて、webの側面の話をすると、これは図書館システムをベースに持続させることが可能なんです。私たちは本、映画、音楽などについても同じ -- 同じ進歩を実現しようと、動き始めています。

Bob: 私は -- NerdTVをやっているわけですが、かなり大きいデータの塊を送り出しています。

Brewster: はい。

Bob: 配信する人数もかなり大きなものです。あなたの水準で言えばたいしたことはないでしょうけど、数十万人が100メガバイトのファイルを持って行くというのはかなりのものですよ。

Brewster: はい。

Bob: それで -- 私たちの問題は帯域です。

Brewster: はい。

Bob: どうやって -- 安く帯域を手に入れるんですか?

Brewster: そうですね、アメリカでは、残念ながら共有財(*commons)という概念がほとんど失われてしまって -- いまだに取り戻せていません。お金を出して買わないとだめです。

Bob: はい。

Brewster: ヨーロッパでは、ピアリング(*peering)と、共有財という古いスタイルがまだ残っています。

Bob: はい。

Bob: Uh-huh.

Brewster: これは -- いったいアメリカはどうなってしまったんですかね、わかりませんが -- とにかく、ヨーロッパではピアリング契約(*peering agreements)というものがあります。

Bob: はい。

Brewster: しかしアメリカでは、ちゃんと買わないといけません。私たちは単にバルクで購入します。私たちはストレージ技術はかなり得意になったし、一度に何ギガビット分も購入します。ギガビット/秒です。そんなわけで、Alexaによると、私たちは100番目に有名なwebサイトになっています。*7

Bob: はい。

Brewster: そして私たちはアーカイブな訳ですよ。

Bob: はい。

Brewster: なんだかクールですよね。

Bob: ええ。

Brewster: これはなんというか、自明とはいえないことです。

Bob: はい。

Brewster: でもとにかく、私たちは -- 私たちは、Alexaの上位webサイトリストの100番目な訳です。つまりこれは、バルクで買って、お金は節約して、私たちに成功して欲しいという他の人たちを見つけることの結果です。たとえば -- インターネットでは、今では単独の波長で80ギガビットを転送できるファイバーがあります。

Bob: はい。

Brewster: 80ギガビットですよ。

Bob: ええ。

Brewster: でも私たちが使っているのはその容量に遠く及びません。

Bob: はい。

Brewster: ISP界隈ではこういう価格モデルがたくさんあって、しかも彼らは問題を抱えている。電話会社は -- トラブルで有名です。でも私たちはそこを突破して、実際にそういう莫大な帯域を使い始めないといけないんです。

Bob: はい。

Brewster: こういう人たちをつぶすことなしにどうやってそれを実現するか? 値段を下げればやる人は増えます。でもそこには隔たりがあります。値段を下げたらみんなもっとたくさん買うでしょうか? それとも彼らの収入が減ってしまうでしょうか?

Bob: はい。

Brewster: 私たちはビデオと音楽を使って、望みのありそうなビジネスモデルが実際にあるんだということを示そうとしています。

Bob: はい。

Brewster: 私たちは広帯域アプリケーション、合法的なコンテンツ -- 人々が実際にほしがるもので、既存の優良顧客を傷つけないののを扱いたい人々たちのために役割を演じているわけです。そういう、人々にとって意味のあるものを見つけることです。

Bob: はい。

Brewster: でも基本的には、倹約的であることが第一です。自分たちがやろうとしていること、そしてその理由付けににまっすぐに取り組むことです。そうすればたくさんの人が手助けをしてくれます。Steve Caseが助けてくれましたし、Jeff Bezosも助けてくれました。私たちはあらゆる人たちから援助を受けています。もっと助力をいただきたいと思っています。いつかGoogleの人たちが乗ってきてくれないかと期待しています。

Bob: Googleはなにかまずいんですか?

Brewster: Googleがまずいかって? 彼らは絶好調だと思いますよ。もう。彼らのサービスは -- 最高です。びっくりですよ!

Bob: 実際には -- ある程度までは -- 彼らはあなたとほとんど同じことをしていますね。ご存じの通り --

Brewster: ええ、もちろん。

Bob: 彼らはwebをキャッシュして -- そして --

Brewster: はい。

Bob: それに彼らは図書館プロジェクトもやっています。

Brewster: そうですね。しかし彼らは -- アーカイブとは違って、大部分はインデックスですよ。

Bob: はい。

Brewster: それで彼らがアーカイブやライブラリになれないというわけではありませんけど。

Bob: ええ。

Brewster: これは単に -- 一般的に、長い目で見ると図書館的なアーカイブというのは費用対効果が良くないんです。今私たちにあるのは -- 彼らの株価は今や空よりも高いくらいですね。

Bob: はいはい。

Brewster: 彼らは -- もう恐れるものなんてないんです。ほとんど何も心配しなくていい。ある意味現代のNetscapeですよ。

Bob: はい。

Brewster: でなければ現代のYahooです。ですよね?

Bob: はいはい。

Brewster: というか、この -- 私たちはこの流れに見覚えがあるわけです。ある時点で彼らは全部のねじを締め直す羽目になる。(*screw it all back down again)

Bob: ですね。

Brewster: それまでは、Googleでは山ほど楽しいことがあるでしょうね。(笑い)彼らは -- すでに非常に興味深いことをたくさん手がけているわけです。でも長い目で見れば、ライブラリやアーカイブというものを商業分野のプレイヤーが支えることはあまりないんです。

Bob: はい。

Brewster: むしろ、長期的な視野を持った社会によって支えられる傾向があります。なので、これもやがて起きることだろうと見ています。あなたは -- まったく正しいです。彼らは -- 彼らはお金をたくさん持っているし、頭のいい人もたくさん抱えていて、さあこれを全部使って何ができるだろう、なんて言っているわけです。しかも彼らは、実は私たちももっと進めていきたいと思っているさまざまなことをすでに実践しています。私たちのものの見方は少し違っています。というのは、彼らは自分のwebサイトと広告ベースの手法にユーザーをつなぎ止めるために、物事をインデックスしようとしています。

Bob: はい。

Brewster: 対して私たちは -- 私たちが本をデジタル化するとき、人々がそれをダウンロードして、印刷して製本して、そのまま持って帰れるような形にしておきたいんです。

Bob: はいはい。

Brewster: でもこれは彼らのビジネスモデルの範疇にはありません。私たちの流儀の一部なんです。

Bob: ただそれで、ビジネスモデルという文脈で言うと、彼らは広告という面では -- 90年代よりもうまくやっているように見えます。彼らは広告でずいぶん収入を得ていますよね。

Brewster: そうですね。

Bob: かつてはこれは難しいことでした。

Brewster: はい。

Bob: では -- 彼らのやり方は何が違うんでしょうか?

Brewster: そうですね。少なくとも -- 私たちがAlexaで広告を売ろうとしていたときは、割と普通の広告営業チームを作りました。

Bob: はい。

Brewster: 基本的には外回りをして、セールスマンと話してくれて、広告を買ってくれそうな個人を探すわけです。

Bob: ええ。

Brewster: Googleが見事にやってのけたと思われるのは、誰とも会話せずに済むような仕掛けにしたと言うことです。ネットワークに接続して、自分がネットワーク上に掲載している広告の価値がどれほどのものか、透過的に理解することができます。しかも誰とも話をする必要がありません。彼らは広告販売のプロセスを自動化してしまったんです。

Bob: はい。

Brewster: これは彼らの重要な洞察力の一つです。しかもそれを見事にやってのけた。彼らの売り上げ額を見れば、彼らが成功したのは明らかです。

Bob: そうすると -- あなたは一山いくらでアイボールを買っているわけですね。これは興味深いです。

Brewster: そうです。クリック数を一山いくらで買っていると言ってもいい。

Bob: クリック数ですか。

Brewster: 自分が実際に買っているものについてちょっと詳しく知ることができる、と言うことです。

Bob: ええ。

Bob: Yeah.

Brewster: 彼らは実際にうまく働くものを作りました。しかも、自分のサイトに人を呼び込むことが不作法にならないようにそれを作り上げたんです。

Bob: ところで、未だにサーチエンジンを縛りつけていると私が思っていることの一つは、自分が関心を持っていることは探せても、実際には -- 探している真っ最中に、見つかったものが1997年に書かれたものだと気がついたりする。先週出来上がったものを見たいときはどうしよう? そして -- ある程度までは、Google Newsを見れば --

Brewster: その通りですね。

Bob: 見ることができます。あれは情報の入れ替わりが速いから、そういうことができるわけですね。

Brewster: Yes.

Bob: でも、もし私が -- 長期的に残るコンテンツを探していたとしたら、難しいわけです。

Brewster: ええ。

Bob: 私は -- 単純に、なぜ誰もまだこの問題を解決できていないのかがわからないんです。

次なるサーチエンジンのフロンティア - The Nerdy Bit

Brewster: それは -- 問題の一つは、データの量が大きすぎることです。まさにあなたの言うとおりで、時間軸はサーチエンジンの次のフロンティアになります。私たちは既にリンクの仕組みを活用している。でも人のたどった足跡というのは、まだそれほど活用できていません -- メタデータを使って検索やナビゲーション全般を補助する、と言う意味でですね。しかし時間軸は -- 新しいこと、今までと違うものが何か、ということを知りたい、と思うことは多いです。

Bob: はい。

Brewster: ですよね? 今流行っているものが何かを知りたいのではないんです。先月は有名ではなかったけど、今は有名になっているものは何か、を知りたいんです。上り調子にあるものを知りたい。それには時間ベースの知識が必要です。でもデータの量は、まあ、とても大きいわけです。私たちは毎月25テラバイトのデータを収集しています。

Bob: はい。

Brewster: そんな量のデータが入ってくるだけでも気が遠くなりますよ。しかもそのデータを、すでにため込んでいるペタバイト分のデータと比較しないといけないんですから。

Bob: ええ。

Brewster: だから、YahooやMicrosoftやGoogleのように大きな組織であっても、こういう種類の演算処理は容易なことではありません。必要な技術だってまだ開発していない。だからその辺の仕組みのいくらかは私たちの方で作りました。彼らはそれをコピーします。彼らは -- 彼らは吸収しますよ。

Bob: 興味深いのは -- これをちゃんと動かすには、アーカイブのデータセットがないと話になりませんよね。

Brewster: そうですね。

Bob: 彼らはそれを持っていないけど、あなたは持っている。

Brewster: 彼らも持っていますよ。自分が知る限りでは --

Bob: 本当ですか?

Brewster: ああいう -- ああいう会社は捨てるということをしないんです。

Bob: 彼らは捨てないと?

Brewster: 捨てませんね -- 外部からアクセスできるようにはなっていないかも知れませんが -- 彼らは膨大なデータを持っています。本当に膨大です。


そしてこういうものを -- まるまる営利企業が抱えていると、信頼の問題というのが生まれてきます。

Bob: はいはい。

Brewster: 長期的に見れば、私たちはもう少し、プライバシーの観点に立ち返るべきだと思います。

Bob: そのことについて教えてください。なぜこうした企業が大量のデータを持っていることを心配しないといけないんでしょうか?

Brewster: アメリカにおける企業のモチベーションの構造は非常に直接的です。株式会社であれば、株主の利益を追求しなくてはいけません。それ以外の目的を追求することは許されません。それだけです。あたかも -- 法的には、自分が企業の信託を受けているなら、それ以外にできることはないんです。このために、自分が実行できる取り引きは厳しい制限を受けます。時には少し制限がゆるむこともありますが、ある時点で企業が経済的な利益を第一に追求していなければ、株主は企業を訴えることもできます。非常に厳しく縛られているんです。というか、これは -- これが面白いのは、非常に直接的だと言うことです。

Bob: はい。

Brewster: つまり、みんなお金を追いかけているだけなので、人々の動きを予想するのはとても簡単だと言うことです。

Bob: はい。

Brewster: それで -- でもあなたが -- たとえばそうですね、従業員の幸福とか、顧客との信頼関係とか、お金以外に手に入れたいものがあるとしたら、人の動きというのはちょっとぼやけてしまって、大概はまぜこぜになって見失ってしまいます。時間がたてば物事は変わるし、リーダーも変わるし -- こういう企業はとても長い間存在し続けます。

Bob: はい。

Brewster: そして、もしそうした企業がネット上のwebページだけではなくて --

Bob: はい。

Brewster: 誰が何について検索したか、という情報まで集めていたとしたら?

Bob: はい。

Brewster: インターネットのちょっとした汚い秘密の一つは、インターネット -- IPアドレスは個人に結びつく、ということです。誰かが -- あるIPアドレスがこれこれについて検索をした、ということがわかれば、たいていの場合、その検索をしたのが誰かというのを導き出すことができるわけです。これはとても大きな情報です。私たちは始終サーチエンジンにあれこれ入力しているわけですから。

Bob: その通りですね。

Brewster: 私が、わかりませんけど、たとえば冒険について考えているとして、別に彼らはあとで私たちを脅かすようなやり方でデータ分析をしているわけではないんですが --

Bob: でもデータは全部保存しているんですよね。

Brewster: 全部保存していますね。ええ、そのことには特に注意すべきだと思います。Alexaは利用ログの匿名化に非常に気を遣っています。IPアドレスを削除するか、そのほとんどを捨てて、個人が特定できないようにしています。他の団体がそこまでやっているかどうかはわかりません。

Bob: まあ、たぶんやっていないでしょうね。手間がかかることは彼らはやりませんから。

Brewster: 一般的には、それを追求することで自分に危険が及んだりしない限りは、ですね。

Bob: ええ。

Brewster: 世の中の傾向というのは、とにかく全部とっておけ、ですから。

Bob: はい。

Brewster: EFFは利用ログの匿名化と、そのために役立つツールの提供に取り組んでいます。私たちも関連するいくつかのワークショップに参加して、利用ログからそういうデータを取り除く手段の標準化についてアイディアを出し合いました。こうしたデータは危険だからです。とにかく手に余ります。これは -- 怖すぎます。

Bob: はい。

Brewster: 図書館のように身元をあかさずに本を読める、というのとはわけが違います。あなたは -- あなたの足跡は追跡されるんです。それについて私たちはどうすればいいか? 私の考えでは、収集されているデータの量については妥協して、確立されたやり方でデータを破棄し始めることになるでしょう。私たちが望んでいるような市場調査を行える程度に --

Bob: はい。

Brewster: あるいはなにがより評判なのかを調べたり、さらには不正使用を見つけ出せる程度に、ですね。

Bob: ええ。

Brester: 誰かが自分を攻撃していたら、それが誰かを突き止めてやめさせることができるように、情報量の多いバージョンのデータは取っておくわけです。でも30日たったら、それを破棄します。

Bob: ですね。あるいはサンプルから外すこともできる。

Brewster: 外せますね。

Bob: ええ。

Brewster: それで、自分が探していたような --

Bob: はい。

Brewster: マーケティングデータの概観のようなものが手に入るわけです。でもコンピュータの中には有毒な廃棄物みたいなものは蓄積されない。弁護士にとってはもうけ話(*lawyer's hayday)です。

Bob: それは、何かの拍子で義務化されない限りは無理ですよ。

Brewster: その通り。

Bob: ではどうすればいいんですか?

Brewster: リーダーを見つけることです。立ち上がって「こうすればうまくいった。こういう実験をした。中身はほとんど公にしている」と声を上げる意志がある人を探すんです。その大部分は非営利部門で現れると思っています。

Bob: はい。

Brewster: 新しいアイディアというのはコモンズから出てくるんです。今の世の中には、すべてのアイディアは永遠に著作権によって保護されなくてはいけないという考えが蔓延しています。これでは誰も新しいアイディアを考えつくことができません。歴史を振り返れば、こんなことは成り立つはずがありません。

Bob: はい。

Brewster: 私は営利団体の数、技術的な非営利団体の数の増加に関心を持っています。これは根元的に興味深いんです。Alexaがあり、Internet Archiveがあり、EFFがあり、Creative Commonsがあり、Public Knowledge、Mozilla、Apacheがあります。新しい世代の人たちがここにいます。

Bob: はい。

Bob: Yeah.

Brewster: かつては企業の中にいた人たちが、非営利という環境で仕事をしているんです。

Bob: はい。

Brewster: こういう組織と一緒に仕事をすることの面白いところは、もう私たちはしょっちゅう一緒に仕事をしていますが、彼らは非常にオープンだという点です。

Bob: はい。

Brewster: 私たちは、どうぞいらしてください、これは持って行っていいですよ。これは全部オープンソースですよ、と言うわけです。ものを交換したり、情報を共有したりするにあたって、これが大きな障害になることはまずありません。私たちはやりすぎなくらいオープンです。新しいアイディアを創造するという意味では、あるいは既存の企業 -- そのいくつかよりも効率がいいと感じています。

Bob: もちろんですね。

Brewster: こうした企業は外骨格生物(*exoskeleton)のようなものです。

Bob: はい。

Brewster: 中身はやわらかくてドロドロなんですが、外側は厚い殻で覆われています。自分がその中にいると、それを破って外に出るのはとても難しい。機密保持契約やらなにやら、面倒なことをしないといけなくて、そういうことが思い切り会社の足を引っ張ります。そういう外骨格生物が走り回っているわけですが -- 非営利団体の方は脊椎動物に近いんじゃないかと思います。

Bob: はい。

Brewster: 彼らには自分のミッションという背骨があるわけですよ。でもこれは柔らかくて、臨機応変に変化します。それに近縁の存在とも一緒に仕事がしやすい。

復古運動としてのオープンソースとクリエイティブ・コモンズ

Bob: このNerdTVの配布は……最初GPLでやろうとしていたんですが……

Brewster: ええ。

Bob: Creative Commonsがちょうど登場してきたので、それを使うことにしたんです。でも普通の放送局に行って、これを無料で配布します、ちなみにコピーも改変も自由ですと彼らに言うと……彼らは、私のことを頭が三つある化け物のような目で見るんですよ。

Brewster: そうでしょうね。でもCreative Commonsライセンスは素晴らしいものですよ。オープンソースソフトウェアの考え方を打ちたてたRichard Stallmanという巨人の肩の上に立つ存在です。

Bob: そうですね。

Bob: Yeah.

Brewster: 彼の考え方は完全に正しいと思います。我々の分野には偉大なヒーローが何人かいますが、Richard Stallmanはそのうちの一人です。

Bob: 人々の目に触れ、人々の耳に届くようにするには、こうしなければいけないのですよね。

Brewster: そうです。そしてこれは昔の姿への回帰であるとも言えます。人々はこれが革新的な新しいアイディアだと言いますが、実際には全然そんなことはないんです。著作権法の内容というものはある時期を境にガラリと変わったのですが、それがいかに害をもたらしているかが認識されるようになったのはようやく最近になってからのことです。つまりですね、1976年の著作権法の改正で、突如すべてのものに著作権が発生するようになってしまいました。

Bob: はい。

Brewster: それ以前は、宣言をしない限り著作権は発生しなかったんです。自分の作ったものに小さく"c"の文字を入れて、アメリカ議会図書館に送らない限り、それは著作物とならなかった。ということでほとんど全てのものが著作物になっていなかったわけです。

Bob: ええ。

Brewster: 実際のところ、私たちがRichard Stallmanなどと共にtechnical schoolで書いていたソフトウェアには作者の署名が入っていませんでした(注: 英文のトランスクリプトでは"they were signed"となっているが、音声では"they weren't signed"と聞こえる。文脈上も妥当と考えられることから、ここでは「署名が入っていませんでした」を採用する)。これはハッカー文化の一部でした。私たちはテクノロジーを一緒に作り上げていたんです。利用制限などというものはありませんでした。そしたら著作権法が変わってしまったんです。そして MITは私たちの作ったものを取り上げてパッケージにして売ったんですよ。そして…

Bob: けしからんですね。*8

Brewster: まったくけしからんですよ。(笑い) 共有財産を売り渡す行為、共有財産の独占化でした。まったく常軌を逸している。それでRichard Stallmanはキレたんです。

Bob: ふむ。

Brewster: 彼は、こんなのは間違っていると言ったんです。全ては1976年の著作権法改正のせいです。それ以前はこんなことは起こりようがありませんでした。しかしその改正後、このようなことになってしまった。それで彼はオープンソースの運動を始めたんです。彼はかつて存在していたバランス、私たちがその中で育ってきた、そのバランスを取り返そうとしたんです。

Bob: なるほど。

Brewster: ということで、オープンソースの考え方は - 実はかつての姿に戻る復古運動なんです。そしてCreative Commonsはその上に、柔軟性とゆとりという、アイディアを扱う上で社会が特に必要としているものを提供しようとしていると言えます。

Bob: MITが売ったものとは何だったのでしょう?

Brewster: 彼らはLisp Machine Systemのライセンスを二つの会社に売りました。SymbolicsとLisp Machines Incorporated*9にライセンスしたのです。私たちが作ったマシンを取り上げ、そのソフトウェアを企業にライセンスするというのは、私たちの信頼を大きく裏切る行為だと思いました。

Bob: そうですね。

Brewster: それに対してRichard Stallmanは「オレが目を離した隙にこんなことをやりやがって」と言ったわけです。

Bob: ふむ。

Brewster: そして彼は、自分たちが活動する上で必要となる絶妙な着地点を見つけ出し、使えるライセンスを作ったのです。以後、さまざまなバリエーションが登場することになるわけですが。

Bob: ええ。

Brewster: しかし彼の出した基本的アイディアは非常に大きな一歩でした。


他の偉人で言えば、この -- この --

Bob: どうぞ。続けてください。

Brewster: -- ええと、AltaVistaのことを思い起こすわけです。AltaVistaは -- 今ではみんなGoogleを使いますが --

Bob: ええ。

Brewster: その前はYahooを使っていた。それはいいんですが、しかしAltaVistaは過去数千年以上にわたって行われたことのない試みでした。すべての情報を集めきれる、と言った人がいたわけです。WAISはそこまで育ちませんでした。WAISと、旧来の出版システムは --

Bob: はい。

Brewster: いや、情報は流通させるんだ、と言ってきた。Altavistaは、いやいやいや。いいから全部集めてしまおうじゃないか、と。Digital Equipment Corporation*10のサーバ室に降りて、Altavistaの本体を見たときのことを覚えていますよ。あれは -- コーラの自動販売機数台分の大きさでした。それで30ギガバイトくらいでした。これがwebのすべてだった。これで全部ですよ。(笑い)そこに鎮座していて、webのすべてを丸ごと検索できるわけです。まだ1995年のことです。これは実に衝撃的でした。これよりも前にすべての情報を集めようとしたのは、アレクサンドリア図書館の人たちです。これが -- この人たちは、本当に面白いことをしようという根性と先見性を持っていました。なので、Altavistaはそういう偉業の一つに数えられると思います。もう一人はTim Berners-Leeです。Tim Berners-Leeは、ネットの篤志家(*statesman)だと思います。彼は大金持ちになれたはずのところに --

Bob: ええ。

Brewster: いや、他の人たちが金持ちになれて、かつそういう世界に私たちもいたいと思えるようなルールを作れるか、やってみようじゃないか、と言いました。彼は純粋に -- 驚くべき人物です。無私無欲で、バランスを保ち、オープンなシステムを維持しようとして -- しかもこれはうまくいっていますんですから。もう一人、私にとっての偉人はBill Dunnです -- 彼はメタデータの概念を思いついた人物です。

Bob: はい。

Brewster: まったく評価されていない人物ですが、実に鋭い考え方の持ち主です。世の中にはこういう、もっと高く評価されてしかるべき人々がいます。振り返ってみれば、当時はいろいろと手荒な批判を受けていたけど、5年くらい経ってみると、ちょっと待てよ、彼らは正しいことを言ってたじゃないか、という。

Bob: はい。

Brewster: 彼はそういう人物の一人です。それで、インターネットは -- うまく回っていると私は思います。私たちはどうかというと -- どんな情報にもアクセスできるべきだという考え方にあります。

Bob: はい。

Brewster: 質問に対する答えが欲しいとき、私たちは機械にその答えを聞くようになってきました。

Bob: はい。

Brewster: ですね。今の私たちは質問に答えてくれる機械を持っているようなものです。Mr. Peabody*11みたいな --

Bob: はい。

Brewster: なんでも知っている -- 物知り先生のような -- それがインターネットなんです。

Bob: はい。

Bob: Yeah.

Brewster: でもそのためにはいくつか大きなステップを踏まないといけない。その大きなステップとは、ネット上に残された大事な情報を手に入れないといけないということです。これをオープンなやり方で実現しないといけない。Web上の情報のほとんどは過去10年間に書かれたものです。1997製、骨董品級ですね、なんてことを言うわけです。

Bob: はい。

Brewster: なんだか隠し事をしているように聞こえませんか?

Bob: そうですね。

Brewster: (笑い)

Bob: いや、まったく。

Brewster: で、私たちは過去何百年分の情報の山をいまだに見聞きできるわけですよ。

Bob: ええ。

Brewster: 私たちはインターネットにそういう古い素材を持ち込んで、欠けている過去を埋め戻さないといけない。Googleは本をスキャンしています。私たちは -- 図書館と協力して本をスキャンしている。こういうものをオンライン化して、読んだりダウンロードしたり、印刷して使ったりできるようにするというこの発想は、とても素晴らしい機会なんです。ここから非常に良い成果が得られるだろうと私は思っています。ここでも著作権法はどうしようもないほど改悪されてしまっているわけですが。

Bob: はい。

Brewster: どこがかというと --

Bob: しかも悪くなる一方ですね。

Brewster: 悪くなる一方です。それで、世界のギーク、世界のナードたる私たちにとって、今がチャンスなんです。私たちが望む未来を自分で作り上げられる立場に、私たちはいるんです。今の世の中にはひどくねじ曲げられてしまっているものもある。一つはこの著作権という代物です。プライバシーは -- もうめちゃくちゃですね。その大部分は技術的に妥協してしまったのが原因です。その中にあって、私たち -- 科学技術者というのは、いわば力を持ったギルドです。

Bob: はい。

Brewster: ここになにがしかの筋の通ったものを作り上げるという仕事は、私たちにかかっているんです。これから20年後に今を振り返って、もし「ああいや、あなたのプライバシーの件、あれは悪いことをしましたね」なんてことをやらかしたとしたら、逮捕されてしまう -- 20年前に自分が検索した何かが、今では政治的に危険と見なされていて、そのことをもって誰かが自宅のドアを蹴り破って来るかもしれない。 Bob: はい。

Brewster: 1950年代はそんなに昔の話じゃありませんからね。

Bob: そのとおりです。

Brewster: そういうことでトラブルに巻き込まれるというのは --

Bob: 共産党の集会に出かけたとか、そういう話ですよね。

Brewster: そうです。大学にいたときに --

Bob: _____(*聞き取れず)からですね。

Brewster: あのころは全く別の呼び方をされていましたが。

Bob: 行ったところで、酒を飲んでいただけなんですがね。

Brewster: そうです。たとえば、アフガニスタンに旅行に行ったとしましょう。そういう行いが -- 後になって破滅的な結果を招くことにもなりかねないわけです。今、私たちはそういう状況をいくらかでも変えられる立場にいます。人々がそういう変化を起こす力があると感じている限り、そこにリーダーシップが生まれます。EFFやCreative Commonsや、Internet Archiveがリーダーシップを発揮するでしょう。YahooやGoogle、政府もそうするでしょう。私は -- いや、政府は時間が経てば変わります。でも世の中には、ちゃんと教育とか、個人の利益や権利についてバランスの取れた見方をする政府がいくつかあります。アジア各国や、このテクノロジーをより良い社会を作るためにどのように使っていくべきか、と発言し始めるであろう、今まさに浮上しつつある国々 -- そういった国に生まれるだろうと期待しています。しかしアメリカや、たとえヨーロッパであっても、そういう政府が生まれるかどうかは確信が持てません。

Bob: なるほど。では --

男性の声: 53分です。

Bob: 53。もう53分過ぎました。そろそろ -- インタビューの時間も終わりに近づいてきました。インターネットの、たとえば5年とか10年先の未来を見ようとして、二つの意味で考えるとすると、片方は私たちが何も間違えずにうまくやれた、という未来です。

Brewster: はい。

Bob: もう一つはうまくいかなかった未来ですね。そういう判断に至るポイントというのは何でしょうか?

Brewster: そこに至るまでにどんな道をたどりうるか、ということですかね?

Bob: そうですね。どんな道がありますか?

Brewster: どういう -- 何を待ち望んでいるか、ということですか?

Bob: はい。

Brewster: うまくやるのであれば、私たちはとにかく多対多対多対多のシステムを持つことになるでしょう。競争はコカコーラとペプシだけで行われるものではありません。競争は5つのレコード会社の間だけにとどまったりしません。競争というのはチャネルのあらゆる点の上にいる、何万もの異なるプレイヤーによって成り立つようになります。

Bob: はい。

Brewster: 何万人もの人たちがwebサイトのようなものを作り始め、何万ものISP、何万ものアクセス手段が生まれます。たった一つのブラウザを通じてどうのこうの、ということはなくなります

Bob: はい。

Brewster: いろんなものを通り抜けていくし、様々なコミュニティに届きます。そこにボトルネックがなければ、それは効率の良いものを作ることができたと言うことです。これが良いビジネスセンスを作り上げるんです。

Bob: はい。

Brewster: 政府が独占を嫌うのにはそれだけの理由があるんです。短期的にはそのほうが常によく見えます。

Bob: はい。

Brewster: それにVerizonとかMicrosoftとか、寡占や独占を目論む連中からたくさん選挙献金も受けられる。

Bob: はい。

Brewster: でもこれをオープンな環境にするにあたって、長期的な視点を持っているなら、これをオープンにすると同時に、ビジネス的に成り立つものにすることもできるんです。それが実際にこういうものを成功させる方法です。どうすれば失敗するかというと、少なくともこの部分について言えば -- 誰かにその一部をコントロールすることを認めることです。一度それを -- そう見えるだけで、実際には、それを裏付けるいいデータは持っていないんですが、誰かにその一部分のコントロールを許してしまうと、彼らはそれをぐるぐるに縛り付けて、さらに上流と下流に乗り出してくるように私には見えます。

Bob: 本当ですか?

Brewster: ええ。なので私は -- 正直出版業界に何が起きたのかについてはあまり自信がありませんが。

Bob: わかりました。

Brewster: ただ、何かがうまくいかなかったのは確かです。そして今では -- まずかったのは流通 -- Ingram*12の流通網ではないかと思っています。一度誰かが始めて -- ほとんどの書籍は一つの場所を経由していて --

Bob: はい。

Brewster: すると、Barnes & Nobleを作るのがもっと簡単になります。でですね、そこから始めて、上流にさかのぼっていくと、全部Bertelsmannとか、あるいは --

Bob: はい。

Brewster: いくつかの大規模な出版業者に行き着きます。

Bob: はい、はい。

Brewster: 単に網の上から下までが収縮してしまったみたいですね。

Bob: ええ。

Brewster: それで私が考えるのは -- 統計で -- 裏付けが取れるわけではないんですが ---

Bob: はい。

Brewster: 誰かに一部分でもコントロールを許してしまうと、彼らはそのコントロールを使って巨大な別の組織を作ってしまいます。組織というのは、自分と同じくらいの大きさの他の組織とつきあうことを好むからです。

Bob: はい。

Brewster: これまで、私たちはいくつかこの類の脅威を経験してきました。ブラウザであれば、すべてが一つのオペレーティングシステムと一つのブラウザに集約されてしまう --

Bob: はい。

Brewster: すると -- 人々を支配できる、というような。AOLは十分にたくさんの人々に対して支配を広げることで、誰もが自分を通り抜けないといけないような状況を作ろうとしました。そうすれば彼らはオープンなインターネットという --

Bob: はい。

Brewster: ビジネスモデルを変更できるわけです。

Bob: はい。

Brewster: これはちょっと恐ろしいことです。今、Tier oneのISPの間で -- 問題が起こりかけています。彼らは支配的な位置に着き始めていて、たとえば政府や出版社のような大組織、出版社協会は彼らと取り引きをするのを好むんです。そうすればネットの一部分で彼らの気にくわない動きがあったら、それを切り離すことができるからです。

Bob: はい。

Brewster: つまりここで、連鎖の上から下に至るまでの問題が生じようとしているのを私たちは目の当たりにしています。でもその知識は、私たちの警戒心や、Larry(訳注:Lawrence) Lessigのような立派な人たちや、ワシントンDCにあるPublic Knowledge、彼らはこういう、ちょっとややこしくて、技術的でギークっぽい問題をより多くの人たち -- 特に、インターネットでの商売をちゃんと安全に保つという仕事ができる、政府の一部の人間に伝えようとしています。そういう人たちの存在によって成り立っているんです。さもなければ、私たちは非常に厳しく管理された環境に追いやられることになるでしょう。まあそうですね、もし私たちが小さいパーソナルAOLみたいな携帯電話しか持てなくなって、自分が見られるものが全部そこでコントロールされているとしたら、悲劇以外の何物でもありません。テレビ業界をもう一つ作る羽目になってしまったら、それはとんでもない話です。

Bob: 大いなる無駄ですね。

Brewster: 全くの無駄です。何か素晴らしいことができるかも知れないという可能性を持ったまま20年間過ごして、それをなくしてしまうようなものです。それで私は自分の時間と財産、これはSteve CaseやJeff Bezosのおかげですが、これを使って、来るべき未来を私たちが本当に生きていきたいと思えるものにするための活動をしています。一日が終わって、「ああ、俺たちは本と同じくらいいいものを作れたよ」と言って、私たち自身がちゃんと誇りに思えるようなものです。私たちは、すべての情報を利用できるようにする、というアレクサンドリア図書館の発想を取り入れました。彼らはエジプトのアレクサンドリアでそれを設立しただけでなく --

Bob: はい。

Brewster: 500年間それを続けました。「火事で焼けちゃったんでしょ?」という人もいますが、それでも500年間運営され続けたわけです。500年分の素晴らしい資料を提供し続けたんです。その一方で、アレクサンドリア図書館を世界中のどんな人でも利用できるようにする、これは毎朝目が覚めたらベッドから飛び出して仕事に行くだけの値打ちがある目標だと思いますよ。

Bob: はい。ありがとうございました。

Brewster: ありがとうございます。

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  • インタビュー後半、1976年の米国著作権法改正とストールマンの話の訳をやる予定でいます。取り急ぎお知らせまで。 -- 福盛秀雄? 2005-10-01 (土) 08:21:27
  • 上記、米国著作権法改正とストールマンの話を本ページに追加しました。「インタビュー全編から - The Entire Show」というセクションを作成して、ここをとりあえずのワークエリア兼参照先としていますが、もし問題があれば修正いただいてもかまいません。内容に関しても同じく、ご意見などありましたらコメントにて。 -- 福盛秀雄? 2005-10-01 (土) 22:57:20
  • 上記箇所にて、英文トランスクリプト内で"elisp machine system"と"Elisp Machines, Incorporated"となっていた部分は、確認の結果それぞれ"Lisp Machine System"と"Lisp Machines Incorporated"が正しいことが分かりましたので該当部分を修正します。 -- 福盛秀雄? 2005-10-02 (日) 23:31:41
  • 追記ありがとうございます。助かります。/今後に向けて著作表記とか作業手順とか考えていく必要があるかも知れませんね。 -- hir? 2005-10-04 (火) 00:21:36
  • そうですね、当面僕は今回(第四話)のように作業予定の箇所を宣言の上、ワークエリア用(?)セクションに記述しておくという方式で、こちらのサイトに自分の作業した訳文を置くようなイメージを考えていました。全体が揃ったところで適当に再編集してもらえればという感じです。著作表記は今は(適当に)自分の名前を追加してしまっていますが、もしもよりよい方法があればお知らせください。 -- 福盛秀雄? 2005-10-06 (木) 22:09:01
  • 現在のガイドライン(案)に合わせてセクション名を「復古運動としてのオープンソースとクリエイティブ・コモンズ」としました。 -- 福盛秀雄? 2005-10-20 (木) 21:07:04
お名前:

*1 アメリカの電気器具販売店
*2 AOL共同創設者。Time-Warnerとの合併を手がけた。現在Revolution社CEO
*3 システムトレーダー、投資会社Dunn Capital創設者
*4 Amazon.com 創設者、CEO
*5 URLは存在する(http://televisionarchive.org/)が、archive.orgにリダイレクトされる上にnot foundになる
*6 Capricorn Technologies(http://www.capricorn-tech.com/index.html)か?
*7 訳者注:transcriptではgigabytesになっているが、音声はgigabitsと言っているようなので音声に従いました。
*8 hir:ここは「逝ってよしですね」と訳したいと思った:-)
*9 http://ja.wikipedia.org/wiki/LISP%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%B3 , http://en.wikipedia.org/wiki/Lisp_Machines,_Inc.
*10 www.dec.comにアクセスするとhp.comのページが表示されます
*11 米国のアニメに登場する犬の物知り博士
*12 米書籍卸最大手

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Last-modified: 2006-03-12 (日) 15:30:30 (1637d)